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CVP分析/損益分岐点分析 Excelテンプレートで、期末着地点損益予測を実際にやってみる

■ 理論倒れのCVP分析。どっこい、期中の損益予測には使える理由とは?



「CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)」「損益分岐点分析(break-even point Analysis, BEP- Analysis)」は、ある程度、変動費比率と固定費が決まっている時、言い換えるなら、期末の目指すべき着地点損益を達成するために、期中の販売数量や販売金額(販売単価)の見込を元に、変動費比率と固定費発生額をコントロールするためのツールとして使用します。

特に、損益トントンとなる「損益分岐点売上高(売上数量)」「ブレーク・イーブン・ポイント(BEP)」を常に意識しながら、右手でコスト発生高、左手で販売数量を同時に測ることで、目標利益の達成を目指します。

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート

その損益分析は、コストを変動費と固定費に分解することで、

① 与件となる売上高、変動費比率、固定費発生額からBEPを一点に探し当てる
② 目標となる利益を達成するために、売上高、変動費比率、固定費発生額のいずれが2つから残りのひとつの値を探し当てる


ことを可能にします。

以下に、CVP分析が有効であるための条件を挙げます。

(1)CVP分析モデルが確定モデルである
将来の企業活動によって生じる収益および費用は、確実に予測できること。
→モンテカルロ法や、リアルオプション法などを使用した統計確率的なシミュレーション手法ではない。

(2)CVP分析モデルは1次関数モデルであるCVPの関係は線形モデル(1次関数モデル)が維持されていること。
→正常操業度の範囲内においては、製品一単位当たりの販売単価、原価単価は一定であるとの仮定を置く。すべての売上やコストは直線で図示される。

(3)原価計算は「直接原価計算」の採用を仮定する
コストは、営業活動量の増減に比例的に発生する「変動費」と、営業活動量の大小を問わず一定額のみ発生する「固定費」とに2分されること。
→全部原価計算における在庫増減の影響がない(生産量と販売量が同じ)という仮定をおく。

上記の前提条件の3つ全てを満たすのは、おそらく、継続的なビジネスを営む企業の単年度損益予算管理の範疇ではないかと筆者は推測しています。

① 目標利益が年度予算から与えられていること
② 来期予算立案のため、標準原価(予定原価)計算制度から、変動費比率情報が得られること
③ キャパシティコストなど、年間の固定費発生額はある程度の幅で予測可能であること


それゆえ、本テンプレートは、年度予算を元に、期中の想定外の4つの変数の変化を入力していくことで、年度末の損益予測を直ちに割り出すことを目的として使用します。それは、すなわち、年度損益予算達成のため、4つの変数のどれが未達原因なのか、あるいはどこを操作すれば目標達成に近づけるのか、示唆を得ること目的としているとも言えます。


■ CVP分析による損益シミュレーションの計算構造とは?



まず、売上高(営業収益)を「金額」で把握するか、「数量」で把握するかでシミュレーションモデルの組立方法が異なります。

「金額ベース」
売上高 = 変動費比率 × 売上高 + 固定費 + 利益
    = 変動費 + 固定費 + 利益

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート ① 売上高ベース

「数量ベース」
売上単価 × 売上数量 = 変動費単価 × 売上数量 + 固定費 + 利益

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート ② 売上数量ベース

このExcelテンプレートは、「数量ベース」で作られていますが、「金額ベース」として使用したい方にも入力を工夫して頂ければお使い方頂けるようにしています。


■ このテンプレートの使い方



「入力シート」
このシートに、月別に、予算値や見込値を事前に分かる範囲で入力してください。入力箇所は、ベージュ色でハッチングがかかった次の4つのセルです。

① 販売数量
② 販売単価
③ 変動費単価
④ 固定費(月別)


20170527_CVP_simulator_年度予算策定

「金額ベース」でしか営業量(売上高)が捉えることができない場合、
「販売数量」には、「販売金額」や「売上高」を入力してください。
「販売単価」には「1」を入力してください。
「変動費単価」には「売上高変動費比率」を入力してください。
そうすることで、金額ベースでもこのExcelテンプレートを使って期末着地点損益予測を行うことができます。

ただし、入力シートにある「BEP台数」は、必ず「BEP売上高」と同値となり、「安全余裕率-台数 (%)」は、必ず「安全余裕率-金額 (%)」と同値となり、2項目の違いが出ることはありません。また、グラフシートの「台数ベース」は、「金額ベース」と同じものを表示するようになります。


「グラフシート」
このシートは、「入力シート」で入力された情報を可視化したグラフを2つ表示するものです。グラフは、Excelの基本グラフ描画の中の「散布図」を使用しています。「散布図」の作り方や数字の拾い方をトレースできるように、各グラフの左側に、グラフ元数字を列挙してあります。ご参考ください。

20170527_CVP_simulator_グラフ(金額ベース)
20170527_CVP_simulator_グラフ(台数ベース)


■ このテンプレートによる実践的な損益予測の方法



(1)年度予算策定
期初の年度損益予算を立案する際に使用する場合、12ヶ月トータルの目標売上高しか分からず、変動費率も固定費も年度一本数値しかない場合、下表のような入力がお勧めです。

20170527_CVP_simulator_年度予算策定

上記のケースでは、年間売上高予算が「3600」、年間予算販売数量が「120」、変動費単価が「5」、年間固定費が「1200」であると分かっている時の入力方法になります。

(2)経過月の実績値から期末損益を予想
将来予測値や見込値が全く入手できなかったり、見込精度が悪くて信頼できなかったりした場合、過去実績値の平均値で残月の予想値を自動で算出し、年度末着地点損益を予想します。

20170527_CVP_simulator_経過月実績から予測

上記のケースでは、6月までの実績が分かっているものとしています。「販売単価」と「変動費単価」は、4~6月の3ヶ月の加重平均値(販売数量で重みづけされた月別の単価の平均値)を求め、7月以降の残り9ヶ月の値として算出しています。固定費は、算術平均値を12倍して年間合計値に変換しています。

(3)経過月の実績値+残月の月別予算値から期末損益の見通しを立てる
将来予測値や見込値が全く入手できなかったり、見込精度が悪くて信頼できなかったりした場合、過去実績値と未経過月の月別予算の合算値で期末損益の見通しを立てます。積極的に、将来予測をすることが実力的にできない、予算や目標値を重視する管理手法を採る場合に多く見られる方法です。

20170527_CVP_simulator_経過月実績+未経過月予算

上記のケースでは、4~6月は実績値、7月以降は月別予算が入力されています。

(4)各変数をバラバラに予測した結果を統合して期末損益を予想
将来予測値や見込値を求める際、月別に揃っていないといけないという思い込みが強い企業がまだまだ多いようです。営業部門は、期末まで月別の販売数量予測値を持っていても、工場はせいぜい向こう3ヶ月のコスト見通ししか持っていないかもしれません。月別に揃っていなくても、Excelシートに組んである「加重平均」「算術平均」機能で、期末着地点損益を算出することが可能です。

20170527_CVP_simulator_予測月度がバラバラの場合

上記のケースでは、販売見込は年度末まで、変動費見込は9月まで、固定費は6月実績までしか把握できていないものをサンプルとして表示しています。

ここで「安全余裕率」の見方の留意点をひとつ。

安全余裕率 = (売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100

上記のケースの様に、「販売数量」「販売単価」「変動費単価」の月別予測値が揃っていない場合、「安全余裕率-台数 (%)」と「安全余裕率-金額 (%)」は異なる数値を示すようになっています。残月の限界利益率(売上高に占める変動費の割合)と限界利益単価(台当たりの限界利益)に違いが出ることがその理由です。予想や見通しの精度を比較し、どちらのほうが当たるか、もしくは低い方を採用して保守的な損益予想を立てるか、使用目的に沿って使い分けてください。

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⇒「経営コンサルタントによる経営戦略と経営管理に効く経営管理会計
20170528_トップページ


財務分析テンプレート『9 Matrix Financial Analytics』無償版のダウンロード開始

1.9 Matrix Financial Analytics とは


財務分析(経営分析)は、数字を算出して終わりではありません。確固たる経営管理の目的を果たすために行われる計数分析作業で、各種の経営管理活動(施策)と連動する必要があり、同時に、その施策に何らかの示唆を与えたり、特定の管理目的の達成度評価や目標設定に役立つものでなければなりません。

経営管理の活動レベルとして、
①商品戦略
②事業戦略
③財務戦略 
の3つ、

経営管理の視点の違いとして、
①ビジネススピード
②投資収益性
③キャッシュマネジメント
 の3つ、

3X3のマトリックスで一覧性を保持しながらも、企業経営における重要な財務指標を選抜してあります。
9 Matrix Financial Analytics


2.選ばれた9つの財務指標とは


財務指標は、各種統計資料や、競合他社とのベンチマークにも活用できるものであると道具性が高まります。その見地から、一般的に決算書として外部に公開されている、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/S)から簡単に基礎数値を取り出せるもので構成されるように工夫しました。

① 売上高成長率

・対前年成長率 = (当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100
・年平均成長率 = (当期売上高 - 初年度売上高)^(1/経過年数-1)×100

→CAGR(Compound Average Growth Rate)
詳細は次の筆者ブログの解説記事を参照してください
「成長性分析(5) CAGR – 年平均成長率の使い方」


② 交叉比率(交差比率)

・交叉比率 = 売上高粗利率 × 商品回転率
= (粗利 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 棚卸資産)×100

→棚卸資産粗利率を、「売上高粗利率」と「商品回転率」とに分解した指標です。
→「売上高粗利率」は、売上高に含まれるマージン(儲け)の割合を示しています。 ※粗利(あらり)=売上総利益
→「商品回転率」は、在庫(棚卸資産)が売れていくスピードの速さを表しています。


③ CCC(Cash Conversion Cycle:キャッシュコンバージョンサイクル)

・CCC = DIO(在庫回転日数)+DSO(売上債権回転日数)-DPO(仕入債務回転日数)
= (棚卸資産 ÷ 売上原価)×365 +(売上債権 ÷ 売上高)×365 +(仕入債務 ÷ 売上原価)×365

→DIO:Days Inventory Outstanding
→DSO:Days Sales Outstanding
→DPO:Days Payable Outstanding
→仕入から商品販売に伴う現金回収までの日数を示し、この日数が小さいほど、企業の現金回収サイクルが早いことを意味します。
→DIOとDPOの分母も全て「売上高」で統一する方式もあります。売上高の何日分という視点では分かりやすいのですが、
それでは粗利分だけ計算結果が影響されてしまいます。


④ ROS(Return on Sales:売上高当期純利益率)

・ROS = 当期純利益 ÷ 売上高 ×100


⑤ ROA(Return on Assets:総資産当期純利益率)

・ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 ×100


⑥ FCF(Free Cash flow:フリーキャッシュフロー)

・FCF = 営業活動からのキャッシュフロー + 投資活動からのキャッシュフロー

→新規に資金調達しなくても、企業内部活動で生み出さるキャッシュフローを意味します。
→厳密な定義式として、FCF=税引後営業利益+減価償却費ー設備投資ー正味運転資本増加額 というのもあるのですが、
決算書(財務諸表)から簡単に取り出せること、どちらの式に基づいても、プラス・マイナスのベクトルは間違わないことから、このテンプレートでは上記簡便法を採用しています。


⑦ CFマージン (キャッシュフローマージン)

・CFマージン = 営業活動からのキャッシュフロー ÷ 売上高 ×100

→顧客への販売活動から直接的にどれだけのキャッシュフローを生み出せているかの割合を示しています。


⑧ ROE(Return on Equity:株主資本利益率、自己資本利益率)

・ROE = 当期純利益 ÷ 純資産 ×100


⑨ Net D/E Ratio(Net Debt / Equity Ratio:純負債資本倍率)

・Net D/E Ratio = (有利子負債 - 現預金)÷ 株主資本

→「株主資本」の名が法定の貸借対照表(B/S)に存在し、この数値を使用すると、少数株主持分(非支配持分)と新株予約権が含まれないことになります。この財務指標の管理目的に照らして、両者を含む「純資産」の値を用いることにします。


3.どうして「9つ」にこだわるの


アメリカの認知心理学者ジョージ・ミラーが『人間の脳は7個くらいしか短期的に記憶できない』と提唱した説に則り、自身の経験則からも、人間が並列で物事を評価したり、関連付けたりする数(チャンク)は、7±2 が妥当であると考えています。さらに、研究が進んで、Webデザイナーの業界では、さらに絞り込まれて、4±1 とも言われています。そこで、2軸のマトリクス化で、それぞれ3つずつに分けることで、階層化し、人間の脳に刻み込まれやすいフレームワークにすることに腐心しました。それでも、9つが多すぎるというユーザに対しては、さらに絞り込んだ下記の5つに焦点を当てることを推奨します。

9 Matrix Financial Analytics_5 focus indexes

② 交叉比率
④ ROS(Return on Sales:売上高当期純利益率)
⑤ ROA(Return on Assets:総資産当期純利益率)
⑥ FCF(Free Cash flow:フリーキャッシュフロー)
⑧ ROE(Return on Equity:株主資本利益率、自己資本利益率)



4.財務指標の計算式で注意すべきところは


「財務比率」を計算する際に、貸借対照表(B/S)の数字を使う場面は多いものです。そこでは、通常、何の断りもない場合は、B/S数値については「平残(平均残高)」という補正値が使用されるのが普通です。例えば、総資産を用いて、ROAを計算したい場合、分母に持ってくる総資産の値を、

・総資産 = (期首総資産残高 + 期末総資産残高) ÷ 2

という計算式で、ROAを算出するに当たり、利益創出に使用した資産を正しくとらえようとする試みからこの領域での一般常識になっています。
ただし、ROEツリー(デュポンチャート、デュポンツリー)のように、上位の財務指標をブレークダウンして詳細分析していく際に、この「平残」方式は財務指標間の相関関係を見るのに、大いに邪魔をしてくれています。また、ここまでITが発達した時代で、ざっくり期首期末の単純平均で、評価期間の総使用資本量を推し量るというのは乱暴に過ぎます。そこで、本テンプレートでは、中途半端な精緻化はやめて、B/S値を使用する際には、期末値を思い切って用いることにします。したがって、巷の経営分析データや貴社内の管理資料と若干分析結果に違いが生じる可能性があります。その際は、本テンプレートの計算式を自由に改変して頂いて構いません。その労に対応して益のある分析結果が得られるとお考えなら、その方針を妨げるものは当方にはありませんので。

参考まで、資本使用量概念にあくまで本質的に迫っていくなら、「積分」で対象データを求めるべきなのですが、会計実務でギリギリ用いることができるのは、4半期決算毎の期首期末値を使ったもので、これでもかなり年間の使用資本(資産)量により本質的に近くなる値かも、というのをイメージ図でお伝えします。

20160820_平残の意味

そして、分母のB/S値ばかりに、本質的な使用資本(資産)量を求めようとするなら、分子の利益等のP/L値も、複利計算で求める必要があります。そうしないと、分子分母がきちんと対応しなくなるので。ここまで来ると、コーポレートファイナンス理論の力を借りる必要が出てきます。それゆえ、スパッと割り切って、経営実態を把握するのに、期末値を採用することに何のためらいもないのが自分流なのです。このテンプレートでは、5か年の推移で財務指標を見ていくので、一時的な資産増も平準化(年次循環考慮後)した姿できちんと可視化できます。


5.このテンプレートの使い方


・「入力シート」から、分析最終年度、決算書から分析対象に使用する勘定科目の金額などを、ベージュ色のハッチングがかかったセルに入力してください。
 (12個×5ヵ年=60個の財務数値を入力)
・「表示シート」では、グラフ化する元数表が表示されていますので、数字だけで確認したい場合はこちらをご参照ください。
 (35種類の財務指標の5ヵ年推移を未確認することができます)
・「グラフシート」では、可視化されたExcelグラフが表示されています。
 (9種類のグラフ、31種類の財務指標を可視化することができます)

できるだけシンプルに作成したいため、一切のVBAマクロを仕込んではいませんので、ご安心してご活用ください。そのため、単位表示など、見やすいグラフにするためには、ユーザの方に多少の作業が発生する場合があります。
なお、本版はサンプルとして、トヨタ自動車株式会社の5ヵ年(FY2011~15)の決算数字を有価証券報告書を元に入力してあります。

最後に、財務指標は、計算してグラフ化して終わりではありません。なぜ、そういう値になったのか、そしてこの先どういう意値になりそうか、原因分析、業績予測と施策立案に役立ててこそ、取り扱う意味が生じます。それゆえ、惜しげもなくテンプレートをここに公開します。つまり、これらの数字を使って、どうやって業績評価をするか、どうやって施策立案するか、そのお手伝いをするのが小職のメインミッションであるからです。ご自身で自社または競合他社、もしくは投資対象企業の財務分析に本テンプレートをご活用いただき、仮に、更に踏み込んだ使い方のレクチャーやカスタマイズをご希望の方は、どうぞ遠慮なく、下記問い合わせ先までご連絡ください。

<注記>
・本テンプレートは、Microsoft Excel 2010 を使って作成しております。
・動作確認は、Windows 7/8/8.1/10で行っています。
・シート構成
① はじめに   ・・・イントロダクション
② 入力シート  ・・・5ヵ年の財務数値を入力
③ 表示シート  ・・・9つの財務分析表が表示
④ グラフシート ・・・9つの財務分析グラフが表示
・各シートは作成環境にて印刷設定を簡易的に施してありますが、印刷される場合は、ユーザ環境で改めて印刷設定されることをお勧めします。

<シートイメージ>
・入力シート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_入力シート_2

・表示シート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_表示シート

・グラフシート

20160820_9 Matrix Financial Analytics_グラフシート

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成長性分析(5) CAGR - 年平均成長率の使い方

■ 成長性分析に使用する「CAGR」とは何か

管理会計(基礎編)
前回」は、今回は、前年成長率と指数分析の深堀りの仕方について説明しました。「今回」は、「CAGR(Compound Annual Growth Rate):年平均成長率」という指標の使い方について解説していきたいと思います。

(たまに、日本語からの逆誤訳で、Compound Average Growth Rate というのもあります)

そもそも、成長性分析の目的には2つある、と指摘させていただいたこと、ご記憶ございますでしょうか?

⇒「成長性分析(1) 理解の動機と表示方法の種別

【目的1】これまでの経営戦略(事業運営・施策実行)がうまくいっているかの検証
【目的2】将来どれくらい成長するか、その伸びしろと成長スピードはどれくらいかの予測


今回の「CAGR」は、いずれの目的にも使用できる指標です。

用語の定義だけ先に済ませると、
「指定した期間に亘る成長率から、1年あたりの成長率として算出した幾何平均」(WiKi

これをかみ砕いて説明させていただくと、

「現在値からある将来時点の値まで、毎年どれくらいずつ均等に成長すれば、到達できるか、『複利計算』の計算構造を使って明らかにしたもの」

となります。


■ 「単利」と「複利」の違い

では、「複利計算」の仕組みを理解するために、「単利」と比較しながら数字の動きを見てみます。下記例では、皆さんが虎の子の現金を銀行に預けたときに受け取る利息がいくらになるかで両者の違いをみてみます。

財務分析(入門編)_単利と複利 

「単利」
銀行に預ける元手を「元金」とか「元本」といいます。単利の場合、「年利:10%」と言えば、銀行に預けた「元金」に対して、毎年、決まって同額の10%の利息が付くことになります。
(「年利」とは、利子の支払期間を1年単位とする場合の、元金(基準金額)に対する利子の割合のこと)

「複利」
銀行に預けた「元金」に付けられた「利息」がプラスされて、次の期間の「利息」を計算するベースの元手には、「元金+前期の利息」という合計値が使用されるため、前期の利息にも今期の利息がかかるようになります。

元金:1000 × 10% = 100
1年目の利息:100 × 10% = 10
2年目の利息 = 100 + 10 =110

では、10年間の推移で「単利」と「複利」を比較してみましょう。
財務分析らしく、例えば、「売上高」なんかが、10年間で「平均10%成長」といった場合、「単利」と「複利(CAGR)」とで、どのように見え方が違ってくるかを確認します。

財務分析(入門編)_年平均10%成長_数表

MS-Excelのスプレッドシートで数表を作成しましたので、CAGRを算出する計算式は、セル「O7」「O11」を確認してみてください。

財務分析(入門編)_年平均10%成長_グラフ

グラフは、上記のようになります。

視覚的に分かることは、
① 単利(単純成長)は、前年成長率は逓減する(徐々に減っていく)
  →分母が大きくなるのに、分子は一定額であるため
② 単利(単純成長)は、前年伸長額は一定だが、複利(CAGR)は、前年伸長額が逓増する(徐々に増えていく)
③ 複利(CAGR)は、毎年の前年成長率と測定期間のCAGRが一致する 
④ 比較する年数が長くなればなるほど、「単利」と「複利」の成長スピードに大きな差異が発生する

したがって、複数年の成長率や成長スピードを吟味したい場合は、毎年の前年成長率を見るより、複数年にわたる測定期間の平均的な成長率を年率に直した「CAGR」を確認することをお勧めします。

この章の最後に、一応、CAGRの計算式を図解しておきます。
(初心者の方・数学が苦手な方は、Excelの計算式をただ丸暗記しておけばいいです)

財務分析(入門編)_CAGR計算式

■ 【目的1】過去実績の検証に「CAGR」をどう使うか

下表は、トヨタ自動車の5ヶ年の売上高成長性分析になります。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_売上高のCAGR 

FY11の前年成長率が、-2.16%だったり、FY12の前年成長率が、+18.73%だったり、毎年の変動が大きく、この5年間の通算の成長度合いは、単年度ベースの前年成長率を並べて眺めてみても、よくわかりません。FY09からFY13までの5ヶ年の「CAGR」は、7.9%なので、トヨタは、この5年は毎年平均で8%弱ずつ売上高が成長していった、ということが分かります。

ここまでは通説としてのCAGRによる成長性分析。ここからは、もう一歩踏み込んでトヨタの売上高成長性に切り込みます。

上記の数表に、「年平均売上高」という項目があります。これは、
・FY09の売上高:18兆9510億円
・FY13の売上高:25兆6919億円
・5年間のCAGR:7.9%
が判明していれば、CAGRの計算式から逆算して、年平均7.9%の成長が本当に達成されていたら、FY10~12の売上高がいくらになっていたかを示す数値です。

さらに、「実際売上高」と「年平均売上高」の差額(対実売上高差異)を求めることによって、巡航スピードで成長していった7.9%の成長率に比較して、中間年度の実際売上高がどれくらい上方乖離または下方乖離していたかを見るものです。

財務分析(入門編)_トヨタ_売上高成長性分析_CAGR

上記例のトヨタの場合、この差額がプラスであるため、CAGR:7.9%は、測定期間の後半で集中して達成された(追い込み効果)ということが分かります。これが逆に、マイナス値の場合は、先行逃げ切りタイプとなります。

この数値の乖離幅と、プラス・マイナスの方向性とで、この5年間のトヨタの売上高の伸びの偏在性が分かります。偏在しているということは、その原因が、販売地域、販売車種、為替変動のいずれにあるのか、要因分析の糸口になります。全く手に武器も持たずに、トヨタの売上高成長性を解析しようというのはあまりに無謀です。CAGRのような基準値をまず明らかにしたうえで、詳細の施策の良否を評価するようにしてください。


■ 【目的2】将来の成長性予測に「CAGR」をどう使うか

将来予測については、完全に外部の第三者が情報を入手することは、インサイダー情報でも手に入れない限り無理なので、下記に、想定モデルを引いて説明します。

まず、向こう5ヶ年の中期計画を立案しようという場面を想像してください。今年度の売上高の着地点見込みが1000億円、経営会議で新中計の目標売上高が5倍の5000億円と結構アグレッシブな目標設定がなされた場合、巡航速度だったら、中計初年度から4年目まで、毎年どれくらいの売上高を達成していれば、最終年度の5000億円達成の確度は高まるものでしょうか?

ここで、「CAGR」が登場です。

① 初年度の数値
② 最終年度の目標数値
③ 期間(何年か?)

の3つの変数が与えられれば、「CAGR」は求められます。

財務分析(入門編)_中期事業計画における売上高_CAGRで推論

計算した結果、「CAGR:38%」が求められました。
ここで実務的なポイントを2つほど。

① CAGRがはじき出した毎年の目標売上高は端数を持つので、これを計画値として社内規定に応じて丸める
② 計算された巡航スピードの各年目標売上高をベースに、新製品投入計画や、販路拡大やM&A施策などを、考慮して、実務解に落とす

このうち、②は大変重要です。あくまで、CAGRは巡航スピードを示してくれているだけです。最低限このスピードを守らないと、5年後の目標売上高:5000億円に到達する確率が低くなる、とアラートを出してくれているにすぎません。

M&Aがいつ計画され、対象企業の売上高がいつから増収に効いてくるか、新製品の投入は新中計のどのタイミングで、何期目から飛躍的に売上高が伸びるか、などなど、CAGRによる目標売上高を鑑(かがみ)にして、毎年の販売施策をチェックするのに活用してください。

経理部主導で中計を立案した場合にありがちな、CAGRありきで各年の目標値を設定してしまい、後から事業部に怒られる、ということが無いように!!!
(まあ、あくまで筆者の実体験を踏まえた発言ですので、経理部主導の中計がダメ、と言っているわけではありません。念のため)

最後に、この投稿記事を書いている時点で、「CAGR 中計」でたまたまググった時に、上位で検索された2社の過去中計のグラフを下記にご参考までお示しします。

東芝:2012~2014

財務分析(入門編)_東芝_中計_CAGR

テルモ:Phoenix 2010

財務分析(入門編)_テルモ_中計_CAGR

今回は、「CAGR」- 年平均成長率の使い方について説明しました。
次回は、「前年同期比分析」と「Zチャート」について解説する予定です。
財務分析(入門編)_成長性分析(5)CAGR-年平均成長率の使い方

テーマ : 会計・税務
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成長性分析(4) 前年成長率と指数分析の深堀り

■ 参考事例から読者の誘導法を学ぶ

管理会計(基礎編)
前回」は、各種トレンド分析、特にグラフでの表現方法とその読み取り方を説明しました。復習として適切な事例が新聞記事として掲載されたので、ご紹介します。

2015/3/14|日本経済新聞|朝刊 パソコン世界出荷台数、今年は4.9%減

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「【シリコンバレー=小川義也】米調査会社IDCは12日、2015年のパソコン(PC)の世界出荷台数が14年比で4.9%減少するとの予想を発表した。従来は3.3%の減少を見込んでいたが、新興国を中心に需要が落ち込むと判断した。」

この記事に掲載されていたグラフを下記に転載します。
(出典:日本経済新聞(朝刊)2015年3月14日「パソコンの世界出荷台数と前年比減少率」)

日本経済新聞(朝刊)2015年3月14日 掲載 パソコン世界出荷台数、今年は4.9%減

コメント1:
「実数」を表す棒グラフと、「変化率」を表す折れ線グラフの同時表記は、MS-Excelでも複合グラフとして作成するのが容易な一般的なトレンド分析の形式になります。

コメント2:
棒グラフ用の縦軸が、前回、注意したように、「絶対額」で「差数」を表現しようとして横軸との交点が実質的な意味で「0」となっていません。したがって、読者へ減少額の変化をより大きく見せようとするイメージを植え付けやすくなっています。

コメント3:
折れ線グラフが、パソコンの前年増減率ではなく、「減少率」と表現されているため、記事内容に合わせて、パソコンの世界出荷台数が減少していることをイメージづけようとしています。しかし、前年対比率としては、傾向として減少率が小さくなっていることは注意しておく必要があります。

→パソコン出荷台数が毎年減っているのは事実で、嘘はついていませんが、その印象の付け方に記者の作為を感じざるを得ません。後は、読者の方々の思いに託します。


■ 前年増減率(成長率)のさらなる分析は貢献度で

読者の皆さんは、よくある経済統計の「前年成長率(増減率)」を題材にしたトレンドグラフで、下記のようなGDP成長率のグラフを目にしたことはないでしょうか?

(出典:内閣府「実質GDP成長率とその寄与度」)

内閣府 実質GDP成長率(2006年第1四半期~2013年第1四半期)

前年増減率(成長率)において、GDPの場合は、主に、
① 消費
② 設備投資
③ 官公需
④ 輸出-輸入
で、その増減の原因を合わせて記述しています。

企業会計における財務分析にもこの手法を取り入れることができます。

下表は、GDP成長率分析にならったトヨタ自動車のFY12→FY13の当期純利益の増減率(成長率)の貢献度分析表になります。

財務分析(入門編)_トヨタ当期純利益成長率貢献度分析

計算方法を順に追っていきます。
① 当年実数 - 前年実数 = 前年差異 を求めます。
② 前年差異 ÷ 前年実数 × 100 = 成長率 を求めます。
③ 前年の要素別実数 ÷ 前年の当期純利益 × 100 = 前期構成比 を求めます。
④ 成長率 × 前期構成比 = 寄与度 が求まります。

トヨタ自動車は、FY12からFY13にかけて、純利益が83.8%伸びましたが、この成長に一番貢献したのが売上総利益(粗利)の135.4%。販管費:▲45.8%、法人税:▲19.9%を上回る利益創出を、P/Lのトップラインで稼ぎ出しました。

利益成長率への貢献度分析の場合は、利益へはそもそもマイナス効果となる費用項目は、実数上からマイナス値として扱ってください。ここを間違えると、正負の符号が入り乱れて正しく貢献度を表示できません。ご注意ください。


■ 指数の成長性の詳細分析はファンチャートで

前章と同様に、指数法でも、要因分析が可能です。複数の勘定科目の指数成長を並べるだけです。論より証拠で、まずトヨタ自動車から見ていきましょう。

ベースとなるトレンド表は次の通り。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_トレンド表

ここから、ファンチャートの元となる数表を作成。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート_数表

そして、ファンチャートを作成。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート1

固定費(固定資産)が多い企業の場合、利益の上下変動の方がB/Sなどの項目より激しくなるため、全項目を並べると、このように分布にばらつきがあります。このばらつき自体が貴重な情報になります。固定費比率が高い企業は、レバレッジが効いて、利益変動が大きくなりますし、資本集積の相対的に小さい企業は、CFも合わせて大きく動きます。トヨタは世界に冠たる大企業なので、「利益 > CF > 資産等 > 従業員数」という関係になります。

そこで、より変動幅の大きな項目を順番に外してばらつきを均していきます。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート2

最終形が下図になります。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート3

トヨタは、財務的ファイナンスの無理もしない、大幅なリストラで固定費(人件費など)の削減をしない、売上高総資産回転率も安定、という優良企業の成長過程の典型的な事例を示してくれています。売上高、総資産、純資産がほぼ同じ動きで、従業員数が一番安定している(微増)という成長戦略の理想形のまんまです。

では、日産自動車を次に見ていきましょう。

トレンド表とファンチャートの元になる数表は次の通り。

財務分析(入門編)_日産自動車_トレンド表 
財務分析(入門編)_日産_ファンチャート_数表

同じように、ファンチャートを描いてみます。

財務分析(入門編)_日産_ファンチャート1

リーマンショックの直後、利益は大幅に成長しましたが、その後、成長が高止まりしています。さらに、FCFが減少傾向にあります。これは、営業CFがFY09の5~6割に減少したにも関わらず、積極的な設備投資の結果、投資CFが2倍以上に膨らんだことによります。では、利益とCFを除いた他の項目の推移はどうなっているでしょうか?

財務分析(入門編)_日産_ファンチャート2

まず、資産項目より、売上高の成長が低くなっています。これは総資産回転率の悪化、つまり積極的な設備投資が、売上高成長につながっていないことを示しています。さらに、従業員数が減少(正社員数も純減)しているため、いわゆる人件費の圧縮が行われています。それでいて、純資産 > 総資産(積極的な設備投資でも) > 売上高 という大小関係にあります。

人件費を減らして、設備投資と株主向けに自己資本の充実に力を入れています。現時点(FY14決算がそろそろ分かってくる時期)で、日産の販売・生産力がトヨタに比較してどうなっているか? まあ、前年対比以上に、トレンドで見ていれば、真の実力値とこれまでの戦略の適否がより分かりやすくなるものと思います。
(ご存知の通り、筆者はあえて企業業績の採点自体はしないので、コメントもここで寸止め) 

今回は、前年成長率と指数分析の深堀りの仕方について説明しました。
もう飽きたかもしれませんが、まだまだ成長性分析は続けさせてください。
財務分析(入門編)_成長性分析(4)前年成長率と指数分析の深堀り


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成長性分析(3) トレンド分析 各種グラフの読み方

■ なぜトレンドを表すグラフ形式が複数あるのか

管理会計(基礎編)
前回」から引き続き、トヨタと日産の売上高のトレンド分析のお話になります。単に競合2社の売上高をグラフ化するのに、どういう表現方式があるのか、それぞれの表現方式で説明したいポイントはどのように違ってくるのか、または他人からトレンドグラフを見せられて、商談などで手玉に取られないような留意点などについて説明したいと思います。

まず、グラフ化する基礎数値を「数表」で下記にお示しします。

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移表

数表にて、「N/A」とあるのは、「Not available」の意で、その位置に有意な数字はありませんよ、という意味です。

こうして数表を眺めているだけでも、マイナス値を赤字で表現しているおかげで、FY11のトヨタの減収とFY12の日産の減収にどうしても目が行きます。前者は、東日本大震災の影響で、トヨタのサプライチェーンに影響がでたのと、国内販売が振るわなかったこと、後者は、日産の中国合弁会社の連結範囲の調整の影響が出ていることが、一目でわかります。

前回のおさらいも込めて、「実数表」のトレンドグラフを再掲します。

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移(1)~実数

この種のグラフは、時間軸での売上高の変動の推移を、「実数」で表しているので、毎年の変化度合いと、絶対値の大きさの両方を同時に分析することができます。ある数値の変化を分析する場合、「幅」「率」「絶対額(そもそもの規模感)」の3つを抑えておく必要があるので、それらをすべて押さえているのが「実数表」。ただし、すべてを押さえているということは、ひとつひとつは際立っていないということ。

つまり、「幅」や「率」など、対象となる変化量をある視点から深く分析するために、各種表現方法が用意されているのです。


■ 1.傾向分析 ②差数 -「伸長額」

下記グラフは、毎年の売上高の変化を「差数」「伸長額」で表したものです。

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移(2)~前年伸長額

FY11から12、FY12から13にかけてのトヨタの売上高の回復・成長ぶりが際立っていることが分かると思います。2年連続で3兆円強の成長です。リコール騒動の時に、日産が売り上げを伸ばした分の約3倍を2年連続で取り戻しています。


■ 1.傾向分析 ③(単期)成長率 -「前年成長率」

下記グラフは、毎年の売上高の変化を「変化率」で表したものです。

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移(3)~前年成長率

計算式は次の通りです。

財務分析(入門編)_成長率の計算式

「%」表示したいので、計算結果に100をかけます。また、前期と当期(今期)の差額は、前章で確認した「伸長額」を使っても同じ結果が得られます。ということで、「成長率」を「伸長率」と表現することもあります。

おそらく、成長性分析で最も使用頻度が高いと思われる「成長率」ですが、筆者は次の問題点から、あまりトレンド分析では重視していません。

① 前期数字が基準となっているので、「率」計算が毎期リセットされる
  → 前年対比には有効だが、複数年のトレンドを把握しにくい
② 絶対額を考慮しない指標なので、最終的な経済的効果を把握しにくい

①について、トヨタのFY12:18.7%に対して、FY13:16.4%と下がっています。これを評して、「成長率が鈍化している」という記述を見かけるのですが、絶対額の規模拡大があれば、「収穫逓減」の引力が働きがちになりますし、「前年伸長額」で観察すれば、トヨタのFY13の販売施策が失敗しているようには見受けられません。また、FY13単年度で比較した場合、日産の20.0%に負けているのですが、絶対額ではトヨタが約2倍の伸長額であること、日産は、前年が中国合弁会社の連結決算範囲の調整があってマイナス成長だった低い発射台からの相対的比較で20.0%の高成長率をはじき出しただけです。

こういう深読みを要する「前期比較だけによる成長率」を使用する際には、ご注意ください。
 ※ この課題の解消方法(複数ありますよ)は次回説明予定です
 ※ GDP成長率はこの種の分析が主流ですが、実はちゃんと要因分析できる手法が併用されています


■ 1.傾向分析 ④指数 -「100」か「1」か

前章の最後に言及した「前期成長率」を並べただけのトレンド分析の分かりにくさを解消するために、「指数方式」があります。

財務分析(入門編)_指数の計算式

「基準値」を「100」にする場合と、「1」にする場合があります。「100」したければ、割り算の結果に100をかけるだけです。この方式ですと、トヨタと日産のそもそもの売上規模の違いを逆に気にせずに、複数年度の変化量自体を比較することができます。また、いちいち前年売上高でリセットされない成長の軌跡を描画することができますので、まさしくトレンドを見るのに最適です。

(ただし、絶対額による影響度は、「実数」「伸長額」で別途押さえる必要があります)

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移(4)~指数

この分析手法によると、リコール騒動、東日本大震災、連結範囲の調整など、諸処の要因がありましたが、売上高を成長させるという販売・製品戦略上、FY09~FY13にかけて、トヨタも日産もほぼ同様の結果(「136」と「139」)を見せたということになります。

ここまで、「成長性分析(3)トレンド分析 各種グラフの読み方」の説明をしました。次回は、「成長率」と「指数」について、さらに深堀りする手法をご紹介する予定です。
財務分析(入門編)_成長性分析(3)トレンド分析 各種グラフの読み方


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成長性分析(2) トレンド分析の基礎

■ 「トレンド分析」とは「時間軸に沿って思い出に耽る」ことなり

管理会計(基礎編)
前回」は「成長性分析」を始めるにあたっての心構え的なことと、これからご紹介する手法の全体像をお話しました。さっそく今回は、「トレンド分析」の初歩から始めたいと思います。「前期比較分析」を複数期間並べるだけで「トレンド分析」となるものが多いので、説明を簡略化するために、まず両者の共通項からまとめて説明してしまいます。

「trend」とは、英訳すると「傾向、動向、趨勢(すうせい)、方向、傾き、向き」を意味します。財務分析では、「年次」「四半期」「月次」「週次」「日次」などという時間単位で、「売上高」「費用」「利益」「資産」「人数(従業員、顧客)」「生産高」「受注高」「受注残」などといった指標を並べてみて、

① 推移の傾きが上向きか下向きか → 将来予測
② 予算値や目標からどれくらい乖離しているか → 足元の事業管理の良否の判断

に関するインサイト(洞察)を得ようとします。

ここで、数字を眺める際のコツを2つお伝えします。

① 異常値(外れ値)があったら、「なぜ?」と原因を想像する
② 傾向から上向き・下向き・現状維持が分かったら、次の打ち手を想像する

これを筆者は、「時間軸に沿って思い出に耽る」と表現しています。この記事を書いている時点での格好の例としては、日経平均株価が、金融危機以降の高値を抜けるか、ITバブル(2000年頃)の高値を抜けるか、と騒いでいるあれです。

人は、「昔こういうことが起きたら株価はこれくらいだった。今の経済状態がこんな状況だから、これくらいまで株価が上がるのではないか。」と将来予測をするものです。

そして、「昔の株価水準に比べて、●●業界の平均株価は出遅れているから、●●業界の株を買っておけば、これからでも儲かるかも」と次の打ち手を考えるものです。

(決して、筆者は過去の株価チャートが将来の株価をすべて予言できる、とかテクニカル分析をしないと適正株価を見誤る、と申しているわけではありません。過去トレンドデータを見る際の心構えの一例としてお話しています)


■ トヨタ自動車の時系列データを使って成長性を見てみましょう

こういう時系列に沿った「トレンド分析(前期比較分析)」をするのに、格好の材料を提供してくれるのが、『有価証券報告書』の「第一部【企業情報】 第1【企業の概況】 1【主要な経営指標等の推移】(1)連結経営指標等」です。

『有価証券報告書』は、EDINETか、その企業のホームページ(投資家向け情報)から無料で取得することができます。

下表は、トヨタ自動車の「連結経営指標等」からの抜粋です。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_トレンド表

この表を一瞥(いちべつ)しただけで、トヨタ自動車の経営のすべてが分かる人は大変素晴らしい人です。筆者には、ひとつひとつの数字の裏付けをとっていかないと理解できません。

そこで、まず、手法の紹介も含めて、「売上高」にフォーカスして「売上高成長性分析」からやってみましょう。


■ 1.傾向分析 ①実数

実際の売上高数値を眺めて、あれこれ考えるやり方です。トヨタのFY13の売上高は、25兆6,919億円です。2013年の日本の名目GDPが478兆円だとか、前年のFY12の売上高:22兆642億円からは増えている、といった、何かと『比較』する基準が無いと、直観的にその数字のあらましを把握するのに通常は苦労するかもしれません。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_売上高推移(1)

ここで、企業が紡ぐストーリーに耳を傾けることになります。トヨタは、2009年から2010年にかけて、アメリカを中心にリコール騒動(豊田章夫社長が全米ディーラー代表の励ましの言葉に男泣きまでし、結局2011年1月にピラー訴訟はトヨタ側の勝訴で終結)があり、売上成長が止まってしまいます。その後、FY13中に1米ドル=80円台から100円台と円安基調になり、上記グラフのような売上高の成長を見せます。

このように、その時々のマクロ経済環境およびミクロ経営状況から売上成長の軌跡を味わっていくのです。これが、「思い出に耽る」の意です。

このようなトレンドグラフが提示された際、FY09~FY11の変化率を分かりやすくする目的で、下記のようなグラフを目にすることがあるかもしれません。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_売上高推移(2)

このグラフは、「嘘」はついていません。しかし、FY09~FY11間の変動をつかもうとするあまり、FY12以降の売上高の回復を、目の錯覚により実情以上に誇張することになり、将来の売上成長予測を見誤らせる可能性があります。

実は、筆者もこの類の、横軸と縦軸の交点が「ゼロ」でないグラフで経営報告レポートを経理部時代に上司からの指示で作成したこともありますし、証券会社のレポートで同種のグラフを目にしたこともあります。しかし、その後お仕えたCFOがこの種のグラフによる経営報告をすべてやめさせました。

なぜなら、この種の表現は、「嘘」はついていませんが、急激な変化を誇張しようとする隠された「意図」が入り込むことを排除できないからです。そのような変動幅を説明したい場合は、「実数」ではない表現方法を使います(それは次回に説明します)。


■ 実数は比較対象が無いと適正水準が判断できません

時間軸で、トヨタの売上成長の軌跡とその要因分析ができましたが、その業績結果が良好だったのか、または仕方がないと受け入れざるを得ないレベルだったのか、何かと比較しないと判断できない場合があります。リコールや円安が売上成長に与えた影響は、コンペチタ-との比較により、トヨタ独自の問題だったのか、マクロ経済環境を含んだ業界全体の問題だったのか、そしてその影響度合いはどれくらいだったのかが判明します。

まず、比較対象となる日産自動車の基礎数値を以下に表示します。

 財務分析(入門編)_日産自動車_トレンド表

下記のグラフは、同期間のトヨタと日産の売上高の実数トレンド比較を表しています。

財務分析(入門編)_トヨタ・日産_売上高推移(1)  

せっかくトヨタの売上成長基調の確認のための比較なのですが、一部しか説明できないんですね。FY09~FY11については、日産は順調に売り上げを伸ばしているので、トヨタはリコール騒動の影響で、競合に対してこの期間の売上高成長について、分が悪くなっていることが比較したからこそ分かります。一方で、リコール騒動から抜け、円安の影響が出てきたFY12以降は、トヨタは日産に対して高い伸びを示しています。

一部というのは、日産がFY12の売上高をFY11に比較して減らしている、今度は日産側の売上トレンドに関する説明の必要性が出てきて面倒になった、ということを意味しています。これは、ややこしいのですが、日産自動車のホームページの財務・業績ハイライトでも、決算報告資料でも、FY12の連結売上高は、96,296億円と、FY09~FY13まで、順調に売り上げを伸ばしていることになっています。有価証券報告書は一部の会社についてIFRSを採用しているため、中国の合弁会社を連結範囲とするか否かで、連結外としているのですが、その他の報告資料では、連結内としているために数字が乖離しているのです。

前回」付言した、業界比較での注意点はこのようなところに表れます。

ふっー。
一言で「成長性分析」といっても、まだ「実数」のところしか説明できていません。先はまだまだ長いですね。
財務分析(入門編)_成長性分析(2)トレンド分析の基礎

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成長性分析(1) 理解の動機と表示方法の種別

■ なぜ企業の成長性を気にするのか

管理会計(基礎編)
「成長性分析」のお話をこれからするのですが、まず、何のために企業の成長性を財務数値から確認したくなるのでしょうか。この領域の指標にご興味をお持ちの方は、一度、自分の胸に手を当てて考えてみて頂けないでしょうか。「今期の売上高が前年対比で30%増加(1.3倍)」と聞いて、この企業はなぜ大丈夫と安心できるのでしょうか?

人が企業の成長性を財務数値で確認したくなる動機は、大別すると次の2つになります。

【目的1】これまでの経営戦略(事業運営・施策実行)がうまくいっているかの検証
【目的2】将来どれくらい成長するか、その伸びしろと成長スピードはどれくらいかの予測


【目的1】について
うまく事業運営がなされていれば、自然に拡大再生産が行われるという経済観念からくる一般常識が分析対象となる企業の成長性を確認したいと思わせます。つまり、「増収増益」はうまく経営した証拠、というわけです。

【目的2】について
たとえば、投資家などは、投資対象の吟味のため、投資候補の企業が投資した後、どれくらい成長して利益をもたらしてくれるのか、複数の投資候補企業から1社を選別するために、成長の可能性が一番高い企業を言い当てたい、という動機からというわけです。

それぞれ、動機が不純とか、分析目的をはき違えている、と言いたいわけではなくて、「成長性分析」をそういう動機で行いたいのなら、それなりのふさわしいツールを使用する必要がある、そして目的に応じた指標の見方も心得ておく必要がある、ということを主張したいだけです。

次章以降、かいつまんでそのTips(こつ)を説明していきたいと思います。


■ 企業の成長性を見る目を養う

「対前年比率:25%」などの、成長性指標を見る際、心構えというか、どういう目線でその数値を眺めるのか、その数値から何を読み取ろうとするのか、観察者側にある程度の用意が無いと、表示された数字はただのアラビア数字と「%」記号の羅列にすぎません。

① 出てきた数値を、過去の大まかな経験知と比べてみる
② 出てきた数値を、業界平均と比べてみる
③ その会社の数年間の数値の変化を調べてみる


①について
経済発展が著しい新興国での販売実績や、市場拡大スピードが速いIT業界における売上高の趨勢値などと、成熟した国内市場での販売実績や、商品ライフサイクルが成熟期に入ったものをだけを取り扱って、残存者利益を享受している企業の売上高の変動幅は、明らかに、異なります。

前者は、年率何百パーセントの伸び率の世界かもしれませんし、後者は、前年対比でプラスになれば上出来なのかもしれません。どこが適正値なのか? それは成長性指標を見る立場の人が、数字を目にする前にある程度予見や仮説を持つ必要性があることを意味しています。

②について
自分なりの、成長性指標に対する経験知や仮説が無い場合は、手っ取り早く、分析対象企業が属する業界の平均値や、コンペチタ-との比較をお勧めします。ただし、これにも注意点があります。同じ業界に属している(と思っている)企業たちが、等しく同質的な市場競争をしているわけではない、という事実を踏まえて頂きたいと思います。

たとえば、トヨタ自動車の売上高の成長性をコンペチタ-と考えられている日産自動車や本田技研工業と比べることに、通常は何ら違和感がないかもしれません。ただし、トヨタは金融事業や住宅事業を持っています。ホンダは二輪車事業を持っています。トヨタと日産とでは、経済成長著しいアジアの新興国でのシェアがそもそも違います。

<参考>
新興国は、インフレ率や経済成長率、為替変動など、各国でマクロ経済環境が大きく変わります。名目値である会計上の売上高などの数字は、そうしたマクロ経済の影響を大きく受けてしまいます。そういう売上高を素で比較して、こっちの方が大きい、小さいと議論するだけでは、分析にかける時間はもったいないですよね。

成長性指標で、競合とどういう視点で比較検証したいのか、それによって、一般的に競合企業といわれる企業の数字を丸々持ってきて並べてみても、得られるインサイト(洞察)は少なくなってしまうかもしれません。

③について
たとえば、売上高の成長性を見たい場合は、「売上方程式」とか「レベニュードライバー」、利益の成長性を見たい場合は、「バリュードライバー」といった指標の組み合わせで、どのように売上や利益の成長要因が説明されるか、その分析対象会社の直近数字を各種指標にブレイクダウンして、時間軸に沿って並べて眺めるだけでも、その企業の戦略の優劣が透けて見えることがあります。

⇒「売上方程式


■ 単に前年対比を眺めていれば済む話ではありません

長い前置きになりましたが、それでは、実際にこれから解説する成長性指標を順に紹介しておきます。算式としての指標だけでなく、それをどういう形(グラフなど)で見るのが効果的か、そういう話もしていきます。

・足元の事業運営の良否を判断するために

1.前期比較分析
  (1)実数
  (2)差数
  (3)成長率
     ① 対前年成長率(単年度成長率)
     ② CAGR(Compound Average Growth Rate)(年平均成長率)
  (4)指数(基準年成長指標)
  ※ ここまで代表例で「年」を基準にしています

2.トレンド分析
  (1)傾向分析(上記1.の指標を複数期間並列表示)
  (2)前年同期比分析
  (3)Zチャート   

・将来の企業成長を予測するために

3.モンテカルロシミュレーション(本シリーズでは名前の紹介のみ)
4.回帰分析(本シリーズでは単回帰分析のみを扱います)
5.持続可能な成長率(sustainable growth rate)

次回」から具体的な手法の説明に入ります。お楽しみに!
財務分析(入門編)_成長性分析(1)理解の動機と表示方法の種別



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ROI: Return on Investment 投資利益率(2)

■ ROIが示す儲かり度合いの意味を知る!!

管理会計(基礎編)
前回」は、ROIで収益性分析する際の、最初歩の解説を試みました。今回は、もう少し、実務に近い、数字の作り方、解釈の仕方について説明をします。

実際に、2014年8月期のファーストリテイリング社の有価証券報告書を見てみましょう。

財務分析(入門編)_ファーストリテイリングのFY14のROE


同社は、国際会計基準(IFRS)を採用していますので、勘定科目名称が少々とっつきにくいかもしれません。ここではROIの代表選手として、ROEを例にとります。

念のためですが、
ROE: Return on Equity (自己資本利益率)= 当期利益 ÷ 自己資本 × 100

株主から出資してもらったお金でどれくらい儲けを出したか、その比率で投資効率を測ろうとする指標です。

すでに、上記の表にて、FY14のROEは「12.5%」と答えが出ているのですが、その計算式は分かりますでしょうか?

FY14の当期利益を自己資本で割るのだから、

74,546 ÷ 618,381 = 0.12055...

とやってしまうと、12.5%になりません。

正しい(と思われている)計算式は、

74,546 ÷ ( (570,428 + 618,381)÷ 2) = 0.12541...

となります。

実務として、ご存知の方も、なぜ分母が、前期末と今期末の自己資本を足して2で割るのか、その理由を問われて、正確に答えることができますでしょうか?


■ 「平残」は積分の考え方から

ファーストリテイリングが2014年8月に決算を締めたときに、当期利益として「74,546百万円」分稼いだことになりますが、その稼ぎのために、株主から集めたお金を使いました。では株主から集めたお金をいくら使って、今年1年間稼いだのか?実を言うと、厳密には、いくらつぎ込んだのかは分からないのです。

ビジネスは、毎日お金が動いています。同社の場合は、ユニクロ店舗にあるキャッシャーの中からおつりが出たり、お客様から支払いとして入金があったり、仕入れ業者からヒートテックの下着を買い付けたり、そういう商取引ひとつひとつに、株主から集めたお金をいちいちいくら使用したか、通常は解析不能です。

そこで、貸借対照表(B/S)では、少なくとも、今年始まった時に株主から集めておいたお金、今年終わるときに株主から集めたお金、それぞれはいくらだったかは分かります。そこで、FY14という会計期間の最初と最後の株主の持ち分(株主から集めたお金と、集めたお金から発生した儲け分)を足して2で割ることで、今年1年間平均して、ずっとどれくらいのお金を使っていたかを、類推しようとしているのです。

財務分析(入門編)_平残方式の図解

この類推法によると、

(570,428 + 618,381) ÷ 2 = 594,404.5百万円

5,944億円 ÷ 365日 = 16億円/日

ファーストリテイリング社は、FY14の1年間は、平均して5,944億円分を残高として株主から集めたお金をビジネスに費やしていたと類推でき、1日当たりでは、16億円分を使用していた、と類推することができます。

このやり方を、「平均残高」方式、略して「平残」といって、B/SとP/Lの数値を組み合わせて、各種財務指標を分析する際に、B/S側の数字を算出するやり方として、これまで一般的になっています。 

ちなみに、あくまで論理モデルなのですが、きちんと積分しないと、1年間の使用資金量がちゃんと出ませんよ、ということを可視化するために、下表を掲載しておきます。

財務分析(入門編)_平残方式の限界と積分する必要性

会計分析の専門家の限界に挑むために、次のやり方をご紹介します。この積分思想による「平残」方式の緻密さをできるだけ追及する方法として、四半期決算情報を使うものがあります。

本当にExcelを使って積分する方法は別の回に説明するとして、今回は、簡便法として5つの残高の「算術平均法」で、この思想に迫りたいと思います。これでも「期首期末平残方式」よりぐっと実態に近づけられます。

財務分析(入門編)_四半期決算情報を使った自己資本の平残

四半期情報を使った自己資本平残 
= (5,704 + 6,111 + 6,154 + 6,112 + 6,184) ÷ 5 
= 6,053億円


■ 「ロイ」さんは「資本と利益の区別の原則」をご存じありません

もうひとつ、世の中で当然視されていることに対して異を唱えることになりますが、従来の「ROA」「ROE」「ROIC」の計算式では、分母のとり方にそもそもの問題があります。

もう一度、最初の章で提示した、ファーストリテイリングの有価証券報告書の抜粋の表を確認してみてください。ここで、「自己資本」とされている金額:6,184億円には、今期の儲けである当期利益:745億円がすでに含まれています。

これを、「前回」でも比喩で持ち出した定期預金の例で説明します。

あなたは、手元に100万円があります。1年物の定期預金にすると、1年後に利息が5万円
受け取ることができます。この時、あなたは、この定期預金のROIをどうやって計算しますか?

1年物の定期預金のROI = 5万円 ÷ 100万円 × 100 = 5%

これを次の式で表現したら、あなたはどういう印象を持ちますか?

1年物の定期預金のROI = 5万円 ÷ (100万円 + 5万円) × 100 = 4.76%

ちょっと違和感ありません?

でも、世の中で普通にはびこる「ROA」「ROE」「ROIC」はこのように、分母に利益(リターン)自身が含まれている計算式になっていますよ!

つまり、ROI系の指標では、「資本取引と損益取引の分別がなされていない」ということです。でもイメージでは会計をやっている人達って頭の良い印象ですよね。どうしてこういうおかしいことを放置しているんでしょう?

それは、「前回」の定期預金の比喩の際に、1年物定期預金を2回繰り返して2年物定期預金とのROIを比べたときに、こうせざるを得ない理屈が隠されているのです。

それは「複利」効果というやつです。

1年物定期に利率5%で100万円を預けたときに、1年後に元本と利息(元利という)合わせて、105万円が手元に戻ります。もう1回、1年物定期預金としてお金を預ける場合、今度は、100万円ではなく、手元にある105万円を預けます。この、1年目の利息の5万円に対して、2年目はさらに5%の利息(2,500円)がつくことになります。これが「複利」効果です。

前章で説明した通り、会社が株主から預かったお金を、ひとつひとつの商取引ごとにいくら分を使用したか分からない、でも、商売をしていると、日々儲かっているはず。だからといって、仕入れ先に仕入代金を100万円支払う際に、「95万円はもともとあった株主からの出資金、残り5万円分は、先月儲けたお金」という風に色を付けることは常識的に不可能なのです。

株主から見れば、会社というのは、いわば複利で利益を生む金融商品。決算日の当日ぎりぎりまで、投資したお金は、元金と利益合わせて、事業活動に使用されているのです。

ちなみに、ファイナンスをやっている人が、「企業価値評価(バリュエーション)」する際には、こういう元利含めた採算分析は通常行いません。きちんと、「期首残高」が期末までにいくらの利益(まあキャッシュフローの方が圧倒的に多いですが)を稼いでいるかを評価します。

従来の会計分析専門家とファイナンス専門家、それぞれの立場と業界常識が異なっているわけです。筆者の場合は、バリュエーションの計算式にきちんと「複利」計算が組み込まれていないとダメだと思いますので、ある程度の算式を組んで工夫はしていますが、、、それでも筆者は根っからの文系人間なので、自分でも限界を感じています。(^^;)

最後に、実際にあった笑い話。
80年代に、GEなどを見習って「ROI」を使って事業部の業績評価をやることが流行ったとき、ある日本人が、「おい、来月から『ロイ』って奴が業績評価するらしいぞ。お前知っているか?」「『ロイ』って人名ではなくて、Return on Investment という指標の略称で、、、」

お粗末様でした。

財務分析(入門編)_ROI Return on Investment 投資利益率(2)

テーマ : 会計・税務
ジャンル : ファイナンス

ROI: Return on Investment 投資利益率(1)

■ 投資利益率の迷宮(ラビリンス)へようこそ!!

管理会計(基礎編)
今回から「投資利益率」のお話をします。単に、「財務諸表のこの数字とこの数字を組み合わせると、こんな財務指標がでてきます」が知りたいのでしたら、ググってもらえれば、初心者向けから上級者向けまでの解説記事に必ずヒットすることでしょう。当然ながら、筆者の場合は、「なぜ・なに・どうやって」を説明していくつもりなので、フツーの解説以上を目指していきたいと思います。

「ROI:Return on Investment(投資利益率)」(個人的には、「投資収益率」の方がしっくりくるのですが、、、)は、何かビジネスをやるときに最初に用意した「元手(投資)」がいくらの「儲け(リターン)」を生むことができたのか、百分率で表したものです。ROIは、日本語の別名では、「投資対効果」と呼ぶこともあります。

財務分析(入門編)_世界で最もシンプルなROIの計算式 


■ 「儲け」を考えるときには、時間軸の概念が大事

ここで最初の注意事項なのですが、ビジネスをやっていると時間って大切な概念です。あなたが、銀行に定期預金として100万円を預けるとしましょう。その預入利息が5%で、1年後の満期になったら5万円の利息が手に入る、と考えたとき、ROIはどう計算しますか?

1年定期預金のROI = 5万円 ÷ 100万円 = 5%

ですけど、満期が2年で、受取利息が10万円だったら、ROIをどういう風に計算しますか?

2年定期預金のROI = 10万円 ÷ 100万円 = 10%

このまま眺めていると、どう考えても、2年定期預金の方が、ROIが大きいので、2年定期預金の方がより儲かるビジネスチャンスである、と判断するのが人情だと思います。

でも、1年定期預金は、1年後に5万円が手に入りますが、2年定期預金は、さらに1年経たないと、利息分の10万円が手に入りません。儲けが手に入るまでにかかる期間が異なるものを、単純に並べるだけでは、どっちがより儲かる話なのか、通常は判断に困るようです。

では、この2年間は市中金利が固定されていると考えて、1年物の定期預金に2年間繰り返し預けてみるとどうなるでしょう?

1年目: 元手は100万円、儲けは5万円。1年後の終わりに手元には105万円。
2年目: 元手は105万円、儲けは、105万円 × 5% = 5.25万円。

1年定期預金を2年繰り返したときのROI = (5万円 + 5.25万円) ÷ 100万円 = 10.25万円 ÷ 100万円 = 10.25%

時間軸を2年で固定して、2つの定期預金商品を比べた場合、1年定期預金のROIの方が大きくなります。

1年定期のROI < 2年定期のROI < 1年定期を2回繰り返しのROI

5% < 10% < 10.25%

ROIを比較する時には、時間軸を意識する必要があります。


■ 「リターン」と「投資」を拾ってくる先

何の儲かり度合いをROIで計算するかによって、分子と分母を拾ってくる先が様々に変化するのもROIの特徴です。

下記は、通常の「財務分析入門書」にあるROI計算式の参照元の解説図になります。

財務分析(入門編)_財務分析の世界で最も基本的なROIの計算式

損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をいきなり持ち出す前に、根本の考え方をきちんと理解する必要があります。ROIは、リターンを得るために、先行して投下された投資(元手)の回収率を示すものなので、理屈の上では、リターンが必ず会計的な「利益」で、投資が必ず会計的な「資産」「資本」となるとは限らない、ということです。

例1:「マーケティングROI」
とあるBtoC企業が、広告宣伝活動に投資した結果、商品販売からいくらの利益(粗利)をあげることができたか、広告宣伝活動に投下したコストの回収率で採算をみたい(すなわちROI評価)と考えた場合、

マーケティングROI = 粗利 ÷ (広告宣伝費 + 関連人件費) × 100

という計算式でROIが計算されます。ここには、「貸借対照表(B/S)」は出てきませんね。

例2:「新製品開発ROI」
とある製造業で、10年にわたって開発してきた新製品がようやくお客様に売れて、幾ばくかのお金が企業に戻ってきました。10年の努力がどれくらい報われたか、これまでに新製品開発に投下してきた資金がどれくらいの割合で回収されたか、新製品の粗利を使ってROI的に測定してみたいと考えた場合、

新製品開発ROI = 粗利 ÷ (10年間、P/Lに計上してきたR&D費用の合計) ×  100

という計算式になるはずです。この場合も、「貸借対照表(B/S)」は登場してきませんよ。 


例3:「キャッシュフローROI」
とある投資ファンドで、今回手がけたM&A案件(赤字企業を買収してきて5年間かけて再生し、競合企業に売却)がいくらのキャッシュを生んだのか、投資収益性をROI的に結果検証してみたいと考えた場合、

キャッシュフローROI = 入手したお金 ÷ (買収資金 + 5年間の支援コスト) × 100

という計算式で、今回のディールの採算性を評価するはずです。この場合、入手したお金は、「キャッシュフロー計算書」または「貸借対照表」で確認するしかないですし、買収資金は貸借対照表で「出資金」、損益計算書から5年間の支援コストを持ってくるしかありません。


■ 「ROI」と「ROA」「ROE」「ROIC」の関係整理は包含関係で

前章で説明した通り、何の儲かり度合いを測定するかによって、「ROI」を構成する分子分母が様々なソースから取ってくる必要性を理解してもらったとして、「ROI」と「ROA」「ROE」「ROIC」の根本的な違いはどこにあるのでしょうか?

一番簡単な理解方法は、「包含関係」で整理することです。

財務分析(入門編)_ROIのベン図

数学的に表現すると、「ROI」が「一般解」で、「ROA」「ROE」「ROIC」などは「特殊解」。

分子は、いろいろ議論があるので別の回に説明するとして、今回は分母だけ「ROA」「ROE」「ROIC」の一般的に言われている違いを図示します。

財務分析(入門編)_ROIたちの分母 七変化

重要な点は、何の投資収益性を評価したいのか、によって「何」を意味する分母の定義が変わるということ。それは、外部の投資家が企業や投資案件の投資収益性を測るときには、概して「貸借対照表(B/S)」の右側(貸方)を使いますし、経営者が自社や競合の事業収益性をその事業に使用した(投下した)資産の回収率で測るときには、概して「貸借対照表(B/S)」の左側(借方)を使う傾向が高いことからも窺い知ることができます。

まあ、基本原則を学ぶときには、避けて通れない概念説明から入りました。理屈はどうでもよい、使い方と数字の拾い方だけ分かればよい、という読者はもうしばらくお待ちください。
財務分析(入門編)_ROI Return on Investment 投資利益率(1)



テーマ : 会計・税務
ジャンル : ファイナンス

財務分析のフレームワーク(1)

■ 管理会計(入門編)として「財務分析」が始まります

管理会計(基礎編)
管理会計(基礎編)」で、ベーシックな管理会計の考え方を浅くですが、一通り説明しました。「入門編」は、分野ごとにテーマを決めて解説を進めていきたいと思います。このシリーズは「財務分析」を扱っていきます。

「財務分析」とは(あまりこういった大上段に構えた定義は好みではないのですが)、

「主に『財務諸表』の数字を中心に、時には、人員数や面積、生産高、数量、金利、時間などの計数情報も駆使して、『数字』で企業の経営実態を把握すること」と、筆者は考えています。

ものの本には、計数の分析アプローチから、「実数分析」「比率分析」「構成比分析」「趨勢分析」などという分類をしていたり、「比率分析」で分析対象とする指標群を、「収益性指標」「効率性指標」「安全性指標」などという分類をしていたりします。

また、立派な「分析シナリオ」「企業分析メソッド」というものがあって、数字(特に貨幣価値‐金額)で定量的な表現をする「財務分析」はそれらの方法論の一部に取り込まれていたりします。

このシリーズでは、そういった「分類方法」や、「経営分析手法」も、参考情報として解説はしますが、特定の分析手法に偏りもせず、かといって筆者独自の分析手法をひけらかすこともしません。淡々と、財務分析の個々の手法を説明していきます。


■ とはいうものの、一応の枠組みは示しておきます

あくまで、筆者の説明の全体像を把握してもらうために、全体のフレームワークは仮設定として最初にお示しします。読者の方が、株式投資や企業経営、はたまた経営コンサルティングにて、財務分析に関する知恵が必要になった時には、筆者のフレームワークで整理した各財務指標を、ご自身の使いやすいように使いこなしてみてください。

というのは、ブログへの記事投稿が、「基礎編」と違って、必ずしも先頭から順を追って行う予定ではないので、筆者の仮フレームワークは頭の片隅にでも置いて頂いておかないと、筆者がどこの財務分析の話をしているか、分かりにくくなるからです。つまらないフレームワークかもしれませんが、ひとつの整理法としてご活用頂ければ幸いです。

では、まず、財務分析したい企業の経営モデルの仮説をご紹介します。

財務分析(入門編)_企業経営のサイクルモデル 

1.企業が直面する外部環境(タテ)
経営資源は、「ヒト」「モノ」「カネ」(最近は+「情報」)と分類されることが多いですが、このフレームワークでは、金融市場から調達してきた「カネ」を元手に、「モノ」「ヒト」を実物市場で調達するという形で、企業は2つの市場と対面することを前提にしています。

2.ビジネスの因果関係(ヨコ)
企業経営は、まずリスクをとって事業に投資をして、うまくいけば投下資本からリターン(儲け)を手に入れることでひと続きの事業が完結すると考えることができます。

3.ゴーイングコンサーン(継続企業)の前提
金融市場から調達してきた資金を事業に投資した結果、得られた果実から、資金の出し手に儲けを分配して終わりにするのはもったいない、得られた果実を次の新規事業、または来月の継続事業に再投資してもっと儲けようと考える人も出てきます。そうすると、企業は、キャッシュを生み続けるキャッシュ・マシーンになぞらえることができます。

この半永久的なサイクルを示したのが、上図の①から④までのサイクルになります。


■ 経営サイクルの各フェーズに対応して財務分析を行う

筆者の仮説としての、経営サイクルをご理解していただきましたら、今度はこの図に、分析対象としたい「財務指標」または「財務分析手法」をマッピングしてみたいと思います。

財務分析(入門編)_経営サイクルと財務分析 

①資金調達から②事業投資へ
ここでは、「資金分析」を行います。せっかく資本家から集めた虎の子の資金を経営者が適切に事業に投資しているか、投資実態に無理がないか、資金がショートして倒産の危機に陥っていないか、をチェックします。

この辺は、そもそも「財務分析」が、銀行家が経営者の資金運用に対して、「信用調査」するところが発祥となって発展してきているので、保守的な人種(?)である銀行家を安心させるための分析手法になっています。
(現在の財務比率分析はここから誕生したという説が有力です)

②事業投資から③投資回収へ
ここは、事業家(経営者)の腕の見せ所です。経営者の先見の明で先行投資した事業がどれくらい儲けることができたのか、を明らかにします。その際、利益率の高さ(儲かり度具合い)を測るのですが、投下した資本に対するリターンということで、「ROI:Return on Investment」を見ることが基本形です。ROIは、間に売上高を挟むことで、売上高に対するマージン率と、売上を生み出す事業投資の事業創造性とに分割することができます。

前者がここでいうところの「収益性分析」、後者が「効率性分析」というアプローチで明らかにされます。

③投資回収から④資金配分へ
ここでは、事業から得られた儲けをステークホルダーにどういう判断基準で分配するかに関心が生まれます。一枚の「パイ」をどのように切り分けるか、厚生経済学のように、「公正」とは申しませんが、「適切」に利益を分配したいものです。

ここでいう「適切」というのは、ゴーイングコンサーンとして、事業再投資、事業の半永久的な成長を可能にする分配をする、という意味です。ただですね、必ずしもひとつの経営体にこだわることもありません。投資家が資金を預ける器としての企業を乗り換えたければ、その乗換方法や代替資金の用立て方法もここで議論できるような分析を行います。

④資金配分から①資金調達へ
ここでは、主に、投資家(将来の株主や債権者)が企業体への投資の適切性を評価するための計数分析を行います。いくら投資したら、いつの時点でどれくらいのリターンが見込めるか、そのリスクとボラティリティとリスク許容度はどれくらいか、といった評価を行います。


■ 収益性の裏表関係に気づきました?

世の中で、一般的に「収益性分析」といったら、「いくら投資したらいくら儲かるか」、素直に考えればその字句通りです。しかし、上図では、投資とリターンの関係性から導かれる「収益性」は上下で2回登場します。

投資家が、企業に(再)投資の判断する際の「投資収益性」の評価と、
経営者が、事業に(再)投資の判断をする際の「事業収益性」の評価です。

この収益性の二重性は、貸借対照表(B/S)を挟んで、左に経営者、右に投資家を配置すると、複式簿記(会計)的にも理解が進みます。

財務分析(入門編)_収益性の二重

投資家は、投資利回りを気にします。株主目線ですと、その投資利回りが、単なるインカムゲイン(配当金)だけなのか、キャピタルゲイン(自己株式取得をふくむ株価上昇)も含むTSR的なものなのか、という違いは場合により違いがあります。また、時価ベース(株式利回り・配当利回り)なのか、簿価ベース(ROE)なのか、ということも気になるところです。

さらに、EP、残余利益、経済的付加価値などの指標を問題視するかもしれません。しかし、それらは、結局のところ、投資家の手に入らなければ意味がありません。経済的付加価値自体は、投資家の手元に、リアルキャッシュの形でそのまま届くわけではありません。そういう収益性評価をした結果、株式の売買の形(キャピタルゲイン)またはそれを基にした信用取引の形でようやく果実が投資家のものになります。

ここが、企業価値評価系の指標とROA・ROE・ROS等のいわゆる「R系」の指標との違いになります。

(この論点は、ある読者の方には唐突すぎて難しいかもしれません。追い追い説明しています。ここでは、2種類の立場によって異なる収益性指標があるとだけご認識ください)


■ 今回のオオトリ - 財務分析体系と代表的指標の例示

それでは、筆者の仮フレームワークで整理された「財務分析」体系と、各分析箇所での代表的な指標をマッピングした図をご紹介します。

財務分析(入門編)_財務分析の体系

左側中央の、「資金分析」は、「CF(キャッシュフロー)分析」と「安全性分析」にさらに分類しています。あくまで、筆者が便宜的に分けているので、ものの本では、いささか命名が異なるかもしれません。

右側は、「財務分析」する際に、最も皆さんが興味があるだろうと思われる「収益性分析」がさらに、下位4つに細分化されています。

「成長性分析」は、儲け(利益)そのものの増分分析もしますが、利益のもととなる売上の成長も分析対象とします。もっというと、売上のもととなる、人員や資産の増え方とのバランスまで見ることになります。

「生産性分析」は、単位あたりの収益性(売上だったり利益だったり)を見るものです。指標の組み合わせ方によっては、「付加価値分析」と組み合わされたりします。ですので、こうした分類はあくまで便宜的に、と申し上げています。

「CVP分析」は、外部公表用の財務諸表からは扱えないこと、線形分析が経営実務にあっていないのではないかという批評が最近あること、等から、取り扱いには要注意な指標となります。筆者の経験からは、企業内部情報にアクセスできる場合には、まだまだ有効な指標を提供してくれると考えています。


ここまで、「財務分析のフレームワーク(1)」を説明しました。
財務分析(入門編)_財務分析のフレームワーク(1)





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