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孫子 第2章 作戦篇 6 智将は努めて敵に食(は)む

■ 兵站(ロジスティクス)まで気配りして新事業を始める

経営戦略(基礎編)
巧みに軍(組織)を運用する者は、国内の民衆に二度も軍役を課したりせず、食糧を三度も前線へ補給したりしません。戦費は国内で調達しますが、食糧は敵地で確保します。

戦争を起こして、国家が貧しくなるのは、遠征軍が遠くまで補給物資を輸送するからです。

① 遠い敵地にいる外征軍に補給物資を輸送することを民衆に強いることは民衆の負荷が高まり生活が困窮する
② 補給物資用にモノを調達すると、民衆の生活物資が欠乏する
③ 商工業者たちは、物資の大量調達による物不足につけ込んで、モノの値段をつり上げる
④ 物価が上がれば、政府は平時よりも高価で軍需物資を調達しなければならず、国庫の負担が増す
⑤ 国庫の負担が増すと、国家財政が枯渇してしまい、民衆に対する税金も高くなり、民衆の生活費が削られる

だからこそ、遠征軍を率いる智将は、できる限り敵地で食糧を調達するように努めるのです。

・敵方の穀物一鍾(しょう)を食べるのは、自国から補給される二十鍾に値する
・牛馬の飼料一石は、自国から供給される二十石にも相当する

孫子 (講談社学術文庫)



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敵地を占領後、自国に併合する場合、戦時の現地における略奪が、新政権(占領軍)へのロイヤリティを失墜させ、併合後に上手く統治できない、という政治・軍事上の都合はいったんここでは忘れておきます。

孫子が言いたいのは、「兵站(ロジスティクス)の重要性」です。現代ビジネスにおいては、新規事業を立ち上げた後に、新製品が二の矢、三の矢と次々に投入できるか? 過重労働になって残業が常態化し、継続的な事業として正常運営不能に陥るリスクは無いか? 売上高が増大するということは、売掛金や在庫も比例して増えるため、必要とする運転資金増の手当ては済んでいるか? 

牽強付会のひとつかもしれませんが、孫子の言葉に「戦費は国内で調達するが、食糧は敵地で確保する」というものがありましたね。これは、設備投資など、イニシャルにかかる資金はとりあえず用立てるが、事業が軌道に乗ったら、自事業のビジネスで資金回収し、運転資金は、いわゆる「セルフ・ファンディング」で賄ってくださいね、という資金管理のオーソドックスなセオリーに聞こえて仕方ありません。

PPM理論風に言えば、「金のなる木(Cash Cow)」に早くなってね、ということ。他事業に資金提供するほど、極端でなくてもいいですが、自分の事業で必要な資金は自分の事業で儲けた分で賄って欲しいものです。

「敵に食む」とは、現代ビジネス的には、「対象市場からきっちり先行投資分を含めた運転資金を回収する」と読んで頂いてかまわないと思います。
孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 6 智将は努めて敵に食(は)む

テーマ : 経営コンサルタントからのアドバイス
ジャンル : ビジネス

孫子 第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり

■ いたずらに戦いを長引かせてはいけない

経営戦略(基礎編)
軍隊(組織)を運用するには、とてつもない大金が必要になります。

・ 軍隊の編成(軽戦車千台、重戦車千台、歩兵十万人)
・ 外征の場合の兵糧の輸送(ロジスティックス)
・ 外国使節の接待費用
・ 装備費用(膠や漆などの工作材料の購入、戦車や甲冑の購入)

したがって、こうした規模と形態の軍が戦闘という行動様式をとって敵に勝利するまでの長期持久戦ともなれば、軍を疲労させ鋭気くじく結果となり、また国家経済も疲弊してしまいます。

・ 敵の城を攻囲すれば、戦力を消耗する
・ 野戦も攻城戦もせずにいたずらに行軍や露営を繰り返して、軍を国外に置いておくとその日数分の経費がかさむ

このように、
① 軍が疲弊して鋭気がくじかれる
② 戦力を消耗させる
③ 財貨を使い果たす

という状態に陥れば、それまで中立であった諸侯も、その疲弊に付け込もうと兵を上げて敵対することとなります。いったん、このような窮地に陥ってしまうと、いかに智謀の人であっても、その善後策を立てることは困難になります。

それゆえ、
① 戦争には、多少まずい点があっても迅速に切り上げるという事例があっても、完璧を期したので長引いてしまったという事例は存在しない。
② そもそも戦争が長期化して国家の利益になったという事例は存在しない。

【教訓】
軍の運用に伴う損害を徹底的に知り尽くしていない者には、軍の運用がもたらす利益を完全に知り尽くすことはできない。

孫子 (講談社学術文庫)



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いきなり、章が変わって長文になってきました。事例がいちいち古代の戦争を題材にしているのはご容赦ください。

孫子が想定する戦いは、遠く国外に軍を進めて、会戦で敵軍を破る、または敵の籠る城を攻め落とす、という形式を前提としているので、勝利にたどり着くまで、大軍の兵站(ロジスティクス)が万全であることを維持することの困難性と、それが大金を要し、国家財政を圧迫させる危機感を強く持っているのです。

よって、短期決戦で勝利を収めること、もっといえば戦わずして勝つ(おっと、このセリフは別の節で登場するのでした、、、)ことを最善としています。

これは現代ビジネスにおいて、

① 新規ビジネスへの先行投資は十分に回収できるかの事前検討の重要性
② いったん新ビジネスを始めた際に、兵站(へいたん)として、たとえば、
  ・ 営業や生産現場の人員の士気が十分に高いか(人事管理)
  ・ 新製品が新市場にまできちんと届く販売チャネルが整備されているか(SCM)
  ・ 増大する在庫投資や売掛金の分、膨らむ運転資金が確保されているか(資金管理)

といったことへの目配りがきちんとできている上で、新規事業を立ち上げようとしているか、を十分に検証することを勧めていると理解できます。

今一度、古代の戦争に例をとるならば、
① 戦争が総力戦・消耗戦である以上、一日長引けばその分国家財政に与えるインパクトをきちんと計算しておく
② 時間を度外視して、何事も完璧にしないと気が済まない、小心な完璧主義者は指揮者には向かない
③ 軍備の充実や戦闘での戦果(結果)にしか興味のない幼稚な指導者ばかりでは、国家財政が破たんしてしまう
        → 事業部の設備投資ばかり声高に主張して、借入金を増やして返済できない愚

ということになるでしょう。

歴史上の教訓例としては、長期化したベトナム戦争の影響で、増大する戦費負担でアメリカ合衆国の財政赤字とインフレが起こり、ドルと金の交換停止(1971年:いわゆるニクソンショック)から、米ドルの信認が揺らぎ、変動相場制に移行したことが思い起こされます。

「経済を知らぬ者は兵を語るべからず」

現代ビジネス風に言えば、「資金計画の裏付けのない事業計画は実行に値せず」
孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり


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孫子 第1章 計篇 4 算(さん)多きは勝ち、算少なきは敗る

■ 冷静な思考が勝利を呼び込む

経営戦略(基礎編)
まだ、実際に戦争を開始する前に、第1節で説明した「5つの基本事項」に照らして自軍と敵軍の勝率を比較・計量し、それに基づいて作戦計画を立案・策定して勝敗をシミュレーションしても「勝利」の予想が出てくるのは、敵よりも「勝算」が多いからです。「勝算」が多い方が実戦でも勝利するのが当たり前なのです。

※ 5つの基本事項とは
① 道(ビジョンとミッションの共有)
② 天(マクロ経営環境)
③ 地(事業ドメイン)
④ 将(経営者・管理職のスキルと適性)
⑤ 法(指揮命令系統と業績評価体系)

孫子 (講談社学術文庫)



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孫子は、「勝負は時の運」「やってみなければ勝敗は分からない」という姿勢を厳しく非難しています。第1節で「兵は国の大事なり」と言っていますよね。多大な経費と労力を費やす戦争(現代のビジネスでは新事業の開始などが相当)は、一か八かでやるものではなく、「勝算」が立って初めて始めるもの。

伸るか反るかの大博打で経営してはいけない、という戒めです。

ただし、これを現代のビジネスに当てはめる際には現代のビジネス環境をよく考えなければいけません。シリコンバレー風に「多産多死」を許容する投資環境がある場合、ケインズが言うところの「アニマルスピリッツ」や、サントリー創業者の鳥井信治郎氏が残した名言である「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」という起業家精神の尊重などなど。。。

チャレンジ精神がイノベーションを生み、イノベーションが新しい顧客と市場を創造し、新しい顧客と市場が企業に利益をもたらす。これも真理です。

しかし、冒険を試みるにも、元手が必要。その手当てがつく範囲でなら、なんでもやんちゃなことができるものです。もしかすると成功するかも!?、と思わせる「事業計画書」が無いと、シリコンバレーでもエンジェル投資家が付かないし。このしっかりとした「事業計画書」を描き切る、というのが孫子の言う「算多きは勝つ」ということなのでしょう。

経営の基本は、「大事な従業員を路頭に迷わせない」「倒産・リストラは最大限回避する」という所だと思うわけです。シリコンバレー風は、雇用の流動性も高いので、そこはその地域(クラスター)全体が雇用のセーフティ・ネットになっているのだと考えておいた方が無難でしょう。

やってみて、ダメなら即時撤退する。その時に従業員の生活は最低限守る。この撤退戦も含めた算段も孫子が言う「勝算」に入るのだと思います。
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 4 算(さん)多きは勝ち、算少なきは敗る  

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孫子 第1章 計篇 3 兵とは詭道(きどう)なり

■ 戦いとは騙(だま)しあい

経営戦略(基礎編)
戦争とは、敵をだます行為です。

まず、どのようにして偽りの姿を見せるか。
① 本当はある作戦行動ができるのに、できないフリをする
② 本当は自組織がある効果的な業務ができるのに、できないフリをする
③ 本当は目的地に近づいているのに、まだ遠く離れているフリをする
④ 本当は目的地にからほど遠いのに、敵には近くに迫っているように見せかける

次に、そうした擬態を見せた際に、どのようにだますのか。
① 敵が欲しがる利益を餌に敵を誘い出す
② 敵が混乱しているときには、その隙を突いて敵軍の戦力をそぐ
③ 敵の戦力が充実しているときは、敵の攻撃に対してひたすら防御に徹する
④ 敵の戦力が強大なときは、敵軍との接触を回避する
⑤ 敵が怒りにはやっているときは、わざと挑発して敵軍の態勢をかき乱す
⑥ 敵が自軍の攻撃に備えていない地点を攻撃する
⑦ 敵が自軍の進出を予想していない地域に出撃する

このようにして、その時々の敵の状態を即座に把握して、臨機応変に対応することで勝利を収めるのが兵法家の戦い方なのです。それゆえ戦が始まる前に、こうやれば勝利できると予告することはできないのです。

孫子 (講談社学術文庫)



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孫子は、徹底して勝利にこだわります。こだわるからこそ、非情なまでに敵をだましても平気です。強く勝利を希望しても、もし勝てそうにない状況だったらどうするか。孫子は、勝てる状況を敵をだましてでも作りなさい、といっているのです。要は、「勝てる戦しかしない」という行動原理に徹底することを勧めています。「だます」というのは、その環境作りの方便なのです。

勝てそうにない場合は、徹底的に勝負を避けます。勝てる戦場を見つけるまでは息をひそめます。敵を見ながら、勝てるように勝てるように自組織の行動指針を臨機応変に決めていくので、遠大な行動計画は「絵に描いた餅」扱いです。

こういう孫子のやり方は、「間接アプローチ」といって、弱者が強者に勝つための秘訣です。マーケティングの世界でも、「フォロワー」や「ニッチャー」の戦い方と相通じるものがあります。

徹底的に、二番煎じでリスクをとらない「フォロワー戦略」。

小さくてもいいから、まず少ない経営資源を集中投下して勝てる市場から取っていく「ニッチャー戦略」。

どちらも、強者(リーダー)の行動をよく観察し、自社の対応策を決め、逆に、敵には自社の対応を進める姿はできるだけ見せずに強者の隙を突く。

作戦を考え抜いて、勝ちやすきに勝つ!
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 3 兵とは詭道(きどう)なり

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孫子 第1章 計篇 2 勢(せい)とは、利に因(よ)りて権を制するなり

■ 熟慮によって組織力を高め、機転によって勝利を収める

経営戦略(基礎編)
前節」でお示した5つの基本事項に基づく計略を戦いの前に採用して組織力を高めることができたなら、敵(コンペチター)に勝利する体制を整えることができます。

次は、自組織に「勢(せい)」を付与して、実際の戦いの場における補助手段とします。「勢」とは、その時々の有利な状況により従って、一挙に勝敗を決する切り札を自己の掌中に収めることをいいます。

孫子 (講談社学術文庫)




-----------------
2節目でもう「孫子」特有の抽象論の洗礼を受けてしまいます。早速解説します。

第1節で説明した「5計」をベースに、内政(組織力強化)に努めておけば、戦う前から勝利の確率は大変高いものとなります。しかし、戦場には不確定要素が満ち満ちています。すなわち、戦にいどむということは、必然のみが支配する「計(熟慮・準備)」の領域から、偶然が支配する戦場における「勢(機転・応用力)」の領域へと踏み込むことになります。

将軍(組織のリーダー)には、千変万化する錯綜した状況下に潜む自組織の利益を見抜き、一瞬のうちに勝機(商機)を読み取る、俊敏な判断力が求められます。

ちなみに、「『権』を制する」、の「権」とは、天秤ばかりに乗せる分銅のことを言います。孫子は、将軍が身に着けているべき「勢(機転・応用力)」が、戦場において、戦況を急変させ、にわかに勝敗を決定づける決め手の比喩で使用しています。

つまり、天秤ばかりの片方に分銅をいきなり乗せれば、それまでの均衡が破れ、天秤は即座に傾斜をつけて片方に傾いてしまいます。戦場において、将軍(組織のリーダー)の状況判断ひとつが、その戦場の敵味方の力の均衡を一気に破り、戦況を自軍有利に導く、もしかするとそれまでの劣勢をひっくり返す可能性まである、と、将軍の戦場における機知を重要視しているということになります。

「孫子」は、結構リーダーに多くのものを求めています。同じく中国古典由来の儒学は、同様にリーダーの心構えを中心に説かれたものですが、実践的なリーダーの資質、という意味では、圧倒的に「孫子」側の要求水準の方が高くなります。まあ、心構え的な儒学、実践知的な孫子、現代のビジネスパーソンは、両者をうまく使い分けて学んでいただければと思います。
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 2 勢(せい)とは、利に因(よ)りて権を制するなり


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孫子 第1章 計篇 1 兵とは国の大事なり

■ はじめに

経営戦略(基礎編)
よく、「経営戦略」の基本的な考え方を整理するために、古典の部類に入る「兵法書」「軍事学」から、現代ビジネスに活用できる一節だけを引用し、歴史上の古戦や現代におけるビジネスケースに当てはめて解説している本が多く流布しています。手っ取り早く、「孫子」「クラウゼヴィッツ」「リデルハート」などのエッセンスだけつまみ食いしていますが、体系的に理解しようとすると、全編の解説を足早やでもいいので、ざっと見ていく必要があります。

本シリーズは、「孫子」の「ほんとうにいいたかったこと」が現代のビジネスパーソンの「戦略脳」を鍛えることの一助になればとの思いから、全編の解説を試みるものです。

出所は、浅野裕一著「孫子」(講談社学術文庫)になります。「訓詁学(くんこがく)」:古代の書の意味を研究するにおいて、出土した一番古い文献に基づくことが基本となっており、本書はその習いで、当時(今もですが)で最古と考えられる竹簡を元にしているため、一般に流布している「武経七書本」「宋本十一家注本」のいずれとも系統が異なること、専門家の方にはあらかじめ断っておきます。

孫子 (講談社学術文庫)



では全体の構成・数が分からないと、最後までお付き合い頂けないかもしれませんね。
「孫子」は、「13章」「70節」から成ります。1ブログ記事で1節を基本にしたいと思っていますので、胸を張って「孫子」の解説を目にした、というためには、これから約70記事を読んで頂く必要があります。

最後までお付き合い頂ければ幸いです。


■ 国の命運をかける重大事に際しての心構え

軍事とは、国家の命運を決する重大事であるため、国家存亡をかけた一大決戦をする際の進路の選択は、慎重を期してもしすぎることはありません。そこで、孫子は、一大決戦に向けた戦略策定において、彼我の優越を具体的に評価するための5つの基本事項を示しました。

① 道(ビジョンとミッションの共有)
民衆の意思を統治者に同化させる。平時からこれを実現しておかないと、いざ戦時になった時に民衆と指導者とが死生を共にしようとは思わなくなる。

② 天(マクロ経営環境)
四季の推移の定めや、天候への順応度、客観的に自分たちが置かれている立場がどうなっているのかの把握、外部環境からもたらされる変化にどう立ち向かうべきかに対する認識をきちんと持つ。

③ 地(事業ドメイン)
戦場の地形・地勢は、軍が敗れるか生存するか、いずれの姿を見せているか。勝利の確率が高い戦場としてどこに戦いの場を設定するか。経営資源はどれくらい必要として、今現在どれくらい蓄えがあるのか(無ければ調達する術が分かっているか)。

④ 将(経営者・管理職のスキルと適性)
洞察力、部下からの信頼、部下を思いやる仁慈の心、困難に挫けない勇気、軍律を維持する厳格さといった能力を経営者や管理職が有しているか。

⑤ 法(指揮命令系統と業績評価体系)
部署ごとのミッション、管理職の命令権限、君主(経営者)が将軍(管理職)と交わした期初の握り(コミットメント)が明確に定義されているか。

以上のことは、頭で分かっている(観念的知識)だけは不十分です。具体的に、比較・計量する基準を自社と競合の双方に適用し、採用したい施策評価に活用することで、実際に競争優位があるかを検証するのです。

こうした比較・計量を事前に行うことによって、開戦前から既に勝敗の帰趨を察知することができるのです。

-----------------
戦争は、数多くの要素が絡み合い、偶然に左右されることも多々あります。しかし、大局的に観れば、総合戦力で優勢なものが結局は最後の勝利を勝ち取るものです。そういう意味では、勝利と敗北は、戦う前から必然のものであるともいえます。

とするならば、彼我の総合戦力の優劣を比較・計量して見える化することで、事前に戦局の推移と勝敗を予測することができるようになります。そうして、確実な勝算が得られた場合に限って戦いを行い、あらかじめ策定しておいた経営戦略に従って、既に約束された勝利を抜かりなく実現するのです。

逆に、勝算が立たないと思った戦いは断固として始めない。自国(自社)に有利な条件が整うまで、戦争を回避し続けるのです。これこそが、国家と民衆の命運を託され、国(会社)を指導する者の重い責務なのです。
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 兵とは国の大事なり



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