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孫子 第2章 作戦篇 6 智将は努めて敵に食(は)む

■ 兵站(ロジスティクス)まで気配りして新事業を始める

経営戦略(基礎編)
巧みに軍(組織)を運用する者は、国内の民衆に二度も軍役を課したりせず、食糧を三度も前線へ補給したりしません。戦費は国内で調達しますが、食糧は敵地で確保します。

戦争を起こして、国家が貧しくなるのは、遠征軍が遠くまで補給物資を輸送するからです。

① 遠い敵地にいる外征軍に補給物資を輸送することを民衆に強いることは民衆の負荷が高まり生活が困窮する
② 補給物資用にモノを調達すると、民衆の生活物資が欠乏する
③ 商工業者たちは、物資の大量調達による物不足につけ込んで、モノの値段をつり上げる
④ 物価が上がれば、政府は平時よりも高価で軍需物資を調達しなければならず、国庫の負担が増す
⑤ 国庫の負担が増すと、国家財政が枯渇してしまい、民衆に対する税金も高くなり、民衆の生活費が削られる

だからこそ、遠征軍を率いる智将は、できる限り敵地で食糧を調達するように努めるのです。

・敵方の穀物一鍾(しょう)を食べるのは、自国から補給される二十鍾に値する
・牛馬の飼料一石は、自国から供給される二十石にも相当する

孫子 (講談社学術文庫)



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敵地を占領後、自国に併合する場合、戦時の現地における略奪が、新政権(占領軍)へのロイヤリティを失墜させ、併合後に上手く統治できない、という政治・軍事上の都合はいったんここでは忘れておきます。

孫子が言いたいのは、「兵站(ロジスティクス)の重要性」です。現代ビジネスにおいては、新規事業を立ち上げた後に、新製品が二の矢、三の矢と次々に投入できるか? 過重労働になって残業が常態化し、継続的な事業として正常運営不能に陥るリスクは無いか? 売上高が増大するということは、売掛金や在庫も比例して増えるため、必要とする運転資金増の手当ては済んでいるか? 

牽強付会のひとつかもしれませんが、孫子の言葉に「戦費は国内で調達するが、食糧は敵地で確保する」というものがありましたね。これは、設備投資など、イニシャルにかかる資金はとりあえず用立てるが、事業が軌道に乗ったら、自事業のビジネスで資金回収し、運転資金は、いわゆる「セルフ・ファンディング」で賄ってくださいね、という資金管理のオーソドックスなセオリーに聞こえて仕方ありません。

PPM理論風に言えば、「金のなる木(Cash Cow)」に早くなってね、ということ。他事業に資金提供するほど、極端でなくてもいいですが、自分の事業で必要な資金は自分の事業で儲けた分で賄って欲しいものです。

「敵に食む」とは、現代ビジネス的には、「対象市場からきっちり先行投資分を含めた運転資金を回収する」と読んで頂いてかまわないと思います。
孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 6 智将は努めて敵に食(は)む
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成長性分析(5) CAGR - 年平均成長率の使い方

■ 成長性分析に使用する「CAGR」とは何か

管理会計(基礎編)
前回」は、今回は、前年成長率と指数分析の深堀りの仕方について説明しました。「今回」は、「CAGR(Compound Annual Growth Rate):年平均成長率」という指標の使い方について解説していきたいと思います。

(たまに、日本語からの逆誤訳で、Compound Average Growth Rate というのもあります)

そもそも、成長性分析の目的には2つある、と指摘させていただいたこと、ご記憶ございますでしょうか?

⇒「成長性分析(1) 理解の動機と表示方法の種別

【目的1】これまでの経営戦略(事業運営・施策実行)がうまくいっているかの検証
【目的2】将来どれくらい成長するか、その伸びしろと成長スピードはどれくらいかの予測


今回の「CAGR」は、いずれの目的にも使用できる指標です。

用語の定義だけ先に済ませると、
「指定した期間に亘る成長率から、1年あたりの成長率として算出した幾何平均」(WiKi

これをかみ砕いて説明させていただくと、

「現在値からある将来時点の値まで、毎年どれくらいずつ均等に成長すれば、到達できるか、『複利計算』の計算構造を使って明らかにしたもの」

となります。


■ 「単利」と「複利」の違い

では、「複利計算」の仕組みを理解するために、「単利」と比較しながら数字の動きを見てみます。下記例では、皆さんが虎の子の現金を銀行に預けたときに受け取る利息がいくらになるかで両者の違いをみてみます。

財務分析(入門編)_単利と複利 

「単利」
銀行に預ける元手を「元金」とか「元本」といいます。単利の場合、「年利:10%」と言えば、銀行に預けた「元金」に対して、毎年、決まって同額の10%の利息が付くことになります。
(「年利」とは、利子の支払期間を1年単位とする場合の、元金(基準金額)に対する利子の割合のこと)

「複利」
銀行に預けた「元金」に付けられた「利息」がプラスされて、次の期間の「利息」を計算するベースの元手には、「元金+前期の利息」という合計値が使用されるため、前期の利息にも今期の利息がかかるようになります。

元金:1000 × 10% = 100
1年目の利息:100 × 10% = 10
2年目の利息 = 100 + 10 =110

では、10年間の推移で「単利」と「複利」を比較してみましょう。
財務分析らしく、例えば、「売上高」なんかが、10年間で「平均10%成長」といった場合、「単利」と「複利(CAGR)」とで、どのように見え方が違ってくるかを確認します。

財務分析(入門編)_年平均10%成長_数表

MS-Excelのスプレッドシートで数表を作成しましたので、CAGRを算出する計算式は、セル「O7」「O11」を確認してみてください。

財務分析(入門編)_年平均10%成長_グラフ

グラフは、上記のようになります。

視覚的に分かることは、
① 単利(単純成長)は、前年成長率は逓減する(徐々に減っていく)
  →分母が大きくなるのに、分子は一定額であるため
② 単利(単純成長)は、前年伸長額は一定だが、複利(CAGR)は、前年伸長額が逓増する(徐々に増えていく)
③ 複利(CAGR)は、毎年の前年成長率と測定期間のCAGRが一致する 
④ 比較する年数が長くなればなるほど、「単利」と「複利」の成長スピードに大きな差異が発生する

したがって、複数年の成長率や成長スピードを吟味したい場合は、毎年の前年成長率を見るより、複数年にわたる測定期間の平均的な成長率を年率に直した「CAGR」を確認することをお勧めします。

この章の最後に、一応、CAGRの計算式を図解しておきます。
(初心者の方・数学が苦手な方は、Excelの計算式をただ丸暗記しておけばいいです)

財務分析(入門編)_CAGR計算式

■ 【目的1】過去実績の検証に「CAGR」をどう使うか

下表は、トヨタ自動車の5ヶ年の売上高成長性分析になります。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_売上高のCAGR 

FY11の前年成長率が、-2.16%だったり、FY12の前年成長率が、+18.73%だったり、毎年の変動が大きく、この5年間の通算の成長度合いは、単年度ベースの前年成長率を並べて眺めてみても、よくわかりません。FY09からFY13までの5ヶ年の「CAGR」は、7.9%なので、トヨタは、この5年は毎年平均で8%弱ずつ売上高が成長していった、ということが分かります。

ここまでは通説としてのCAGRによる成長性分析。ここからは、もう一歩踏み込んでトヨタの売上高成長性に切り込みます。

上記の数表に、「年平均売上高」という項目があります。これは、
・FY09の売上高:18兆9510億円
・FY13の売上高:25兆6919億円
・5年間のCAGR:7.9%
が判明していれば、CAGRの計算式から逆算して、年平均7.9%の成長が本当に達成されていたら、FY10~12の売上高がいくらになっていたかを示す数値です。

さらに、「実際売上高」と「年平均売上高」の差額(対実売上高差異)を求めることによって、巡航スピードで成長していった7.9%の成長率に比較して、中間年度の実際売上高がどれくらい上方乖離または下方乖離していたかを見るものです。

財務分析(入門編)_トヨタ_売上高成長性分析_CAGR

上記例のトヨタの場合、この差額がプラスであるため、CAGR:7.9%は、測定期間の後半で集中して達成された(追い込み効果)ということが分かります。これが逆に、マイナス値の場合は、先行逃げ切りタイプとなります。

この数値の乖離幅と、プラス・マイナスの方向性とで、この5年間のトヨタの売上高の伸びの偏在性が分かります。偏在しているということは、その原因が、販売地域、販売車種、為替変動のいずれにあるのか、要因分析の糸口になります。全く手に武器も持たずに、トヨタの売上高成長性を解析しようというのはあまりに無謀です。CAGRのような基準値をまず明らかにしたうえで、詳細の施策の良否を評価するようにしてください。


■ 【目的2】将来の成長性予測に「CAGR」をどう使うか

将来予測については、完全に外部の第三者が情報を入手することは、インサイダー情報でも手に入れない限り無理なので、下記に、想定モデルを引いて説明します。

まず、向こう5ヶ年の中期計画を立案しようという場面を想像してください。今年度の売上高の着地点見込みが1000億円、経営会議で新中計の目標売上高が5倍の5000億円と結構アグレッシブな目標設定がなされた場合、巡航速度だったら、中計初年度から4年目まで、毎年どれくらいの売上高を達成していれば、最終年度の5000億円達成の確度は高まるものでしょうか?

ここで、「CAGR」が登場です。

① 初年度の数値
② 最終年度の目標数値
③ 期間(何年か?)

の3つの変数が与えられれば、「CAGR」は求められます。

財務分析(入門編)_中期事業計画における売上高_CAGRで推論

計算した結果、「CAGR:38%」が求められました。
ここで実務的なポイントを2つほど。

① CAGRがはじき出した毎年の目標売上高は端数を持つので、これを計画値として社内規定に応じて丸める
② 計算された巡航スピードの各年目標売上高をベースに、新製品投入計画や、販路拡大やM&A施策などを、考慮して、実務解に落とす

このうち、②は大変重要です。あくまで、CAGRは巡航スピードを示してくれているだけです。最低限このスピードを守らないと、5年後の目標売上高:5000億円に到達する確率が低くなる、とアラートを出してくれているにすぎません。

M&Aがいつ計画され、対象企業の売上高がいつから増収に効いてくるか、新製品の投入は新中計のどのタイミングで、何期目から飛躍的に売上高が伸びるか、などなど、CAGRによる目標売上高を鑑(かがみ)にして、毎年の販売施策をチェックするのに活用してください。

経理部主導で中計を立案した場合にありがちな、CAGRありきで各年の目標値を設定してしまい、後から事業部に怒られる、ということが無いように!!!
(まあ、あくまで筆者の実体験を踏まえた発言ですので、経理部主導の中計がダメ、と言っているわけではありません。念のため)

最後に、この投稿記事を書いている時点で、「CAGR 中計」でたまたまググった時に、上位で検索された2社の過去中計のグラフを下記にご参考までお示しします。

東芝:2012~2014

財務分析(入門編)_東芝_中計_CAGR

テルモ:Phoenix 2010

財務分析(入門編)_テルモ_中計_CAGR

今回は、「CAGR」- 年平均成長率の使い方について説明しました。
次回は、「前年同期比分析」と「Zチャート」について解説する予定です。
財務分析(入門編)_成長性分析(5)CAGR-年平均成長率の使い方

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(戦略を聞く)大成建設・山内隆司社長 業績・配当・給与、業界首位に

■ こういうROE重視の風潮に付和雷同しない社長インタビューは好感が持てます

経営管理会計トピック
大成建設の山内社長のインタビュー記事が3/25の朝刊に掲載れていました。大成建設は、「中期経営企画(2015-2017)」を3/27にプレスリリースしていますので、一連のIR的動きのものであると推察いたします。

⇒「大成建設 中期経営計画(2015-2017)」←PDFファイル

2015/3/25|日本経済新聞|朝刊 大成建設・山内隆司社長 業績・配当・給与、業界首位に

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「大成建設の業績が好調だ。大都市で再開発工事など案件の増加を追い風に、採算を重視した選別受注が功を奏している。2016年3月期から新たな中期経営計画を始める。山内隆司社長は「業績・配当・給与のすべてで業界トップに立つ」と強調する。」


■ 山内社長の目標設定の合理性

山内社長は、新中計にあたって(それ以前からご発言されているのですが)、「『業績・配当・給与』のすべてで業界トップに立つ」という目標設定をされています。

では、足元での競合他社との位置取りはどのようになっているのでしょうか。

筆者も毎日購読している週刊ダイヤモンドが運営している情報サイト「Diamond Online」に格好の比較材料となるチャートがありましたので、出典元を明確にしたうえで、下記に転載させていただきます。

⇒「清水建設の1円増配に揺れる“コップの中”で争うゼネコン(2015/2/24)」
  http://diamond.jp/articles/-/67357

ゼネコン比較_週刊ダイヤモンドOnline_20150224

FY14第三四半期決算時点の状況では、鹿島、大成建設、清水建設、大林組の4社比較は下記のようになっています。

<業績> - 連結営業利益
1位 大成建設 
2位 清水建設
3位 大林組
4位 鹿島

<配当> - 配当性向
1位 鹿島
2位 大林組
3位 大成建設
4位 清水建設

<給与> - 社員平均年収
1位 大林組
2位 大成建設
3位 鹿島
4位 清水建設 

それぞれについて、新聞記事より、方針・施策を抜き出します。

<業績>
「リーマン・ショック時の09年3月期に営業赤字を経験したことが、立て直しへのバネになった。それ以前は受注量の確保に走り、採算への意識が薄かった。受注案件の取捨選択を厳しくし、営業担当から現場監督まで様々な立場の人間が収支計画を立てて採算管理を徹底するようにした。ほかにも建材調達を現場に任せていたが、価格情報を集約する部署を09年に新設した。結果的に他社より安く仕入れられている」

ポイントは2つ。
① 受注時の見積採算の精度向上 → 赤字JOBの削減
② 資材の集中管理購買による調達価格の削減 

いずれも、「完成工事総利益率」の向上に直接効果がある施策になります。

<配当>
「持ち合い株が多く、株価水準が上がればROEの分母となる自己資本が含み益で膨らんでしまう。ROEの目標は積極的には掲げにくい。まずは業界内で相対的に高い収益性を上げる企業になりたい」

新中計では、業界トップの年8円配当を上回ることを目標にしています。ただし、一株当たり配当や配当性向は、あくまで、高い収益性の結果、株主に報いることができるという真っ当な考え方により、株主還元のためには、先立つ収益性の向上、という姿勢は筆者的には高評価です。結果指標(KGI)である「ROE」を目標変数にしてしまうと、分子(収益性)がよろしくないと、分母(持ち合い株式の売却や有利子負債による置換)の操作に陥ってしまいます。

ゼネコンは、他業種に比べて自己資本比率が低く、「D/Eレシオ」の改善が当座の財務目標になったりします。今回の大成建設の新中計でも、有利子負債のFY17目標額は、3,000億円未満と、現状以下の目標が示されましたが、D/Eレシオについては、FY14見込値:0.6倍までしか提示がありませんでした。

<給与>
「給与でもトップを目指すのは技術系社員の採用強化のためだ。収益が見込める案件でも人員を手配できなければ、工期の遅れや施工ミスなどにつながりかねない。『職長』と呼ぶ現場リーダーへの日当上積みや協力会社向けの技術研修も始めて人材を取り込む」

東京五輪後も見据え、足元の人手不足だけでなく、海外事業の成長(トルコでの原発建設など)を見据えた従業員満足度の向上と海外事業人材の育成を企図されています。


■ 猫も杓子も「ROE」=8% でいいのか?

実は、大成建設は、「有利子負債(3165億円) < 現預金(3555億円)」なので、ネットで考えると、実質無借金経営となっています。
(数字は、FY13末)

一方で、新聞記事にも言及があった持ち合い株式については、投資有価証券が2659億円保有しているうち、2119億円が該当するので、構成比は、約8割。昨今の「包括利益」による持ち合い株式の時価評価(公正価値評価)次第では、純資産額が膨らんでしまい、ROEを見かけ上、悪くしてしまいます。

個別銘柄への言及はここでは避けますが、本業に対するパートナー企業の名もちらほらあります。こういう緩やかな資本提携が本業の業績にいくらか貢献しているのではないか、とも思う所もあり、よくある財務管理や会計の教科書に書いてある「IFRSなどの公正価値会計の時代には、株式の持ち合いを解消すべき。株主への説明責任が付かない」ということが、必ずしも真理とは思っていません。

「『ROE』重視の経営をしない企業は、経営管理が周回遅れである」との言説を見聞きしますが、実は、欧米の進んでいると思われる経営管理手法が不適切で、周回遅れの分、痛い目に会わなくて済んだ、という話もあります。

まあ、筆者的には、はやくROEブームが過ぎ去って、現在周回遅れとされている企業に対する評価の見直しがなされることを期待してやみません。
(決して、大成建設さんが周回遅れと言っているではないので、念のため)

P.S.
大成建設さんの現場で働くすばらしいプロフェッショナルたちの活躍を描いたNHKの放送がありました。思い出したので、ここで紹介しておきます。
(利益にはまだつながっていないみたいですが、技術やこれからの市場を見据えた戦略としては、大変素晴らしいものがあると思います)

⇒「技術開発者・市原英樹 世界初のビル解体、仲間と共に乗り越えろ
 (2015年2月9日 OA NHK プロフェッショナル 仕事の流儀)


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孫子 第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり

■ いたずらに戦いを長引かせてはいけない

経営戦略(基礎編)
軍隊(組織)を運用するには、とてつもない大金が必要になります。

・ 軍隊の編成(軽戦車千台、重戦車千台、歩兵十万人)
・ 外征の場合の兵糧の輸送(ロジスティックス)
・ 外国使節の接待費用
・ 装備費用(膠や漆などの工作材料の購入、戦車や甲冑の購入)

したがって、こうした規模と形態の軍が戦闘という行動様式をとって敵に勝利するまでの長期持久戦ともなれば、軍を疲労させ鋭気くじく結果となり、また国家経済も疲弊してしまいます。

・ 敵の城を攻囲すれば、戦力を消耗する
・ 野戦も攻城戦もせずにいたずらに行軍や露営を繰り返して、軍を国外に置いておくとその日数分の経費がかさむ

このように、
① 軍が疲弊して鋭気がくじかれる
② 戦力を消耗させる
③ 財貨を使い果たす

という状態に陥れば、それまで中立であった諸侯も、その疲弊に付け込もうと兵を上げて敵対することとなります。いったん、このような窮地に陥ってしまうと、いかに智謀の人であっても、その善後策を立てることは困難になります。

それゆえ、
① 戦争には、多少まずい点があっても迅速に切り上げるという事例があっても、完璧を期したので長引いてしまったという事例は存在しない。
② そもそも戦争が長期化して国家の利益になったという事例は存在しない。

【教訓】
軍の運用に伴う損害を徹底的に知り尽くしていない者には、軍の運用がもたらす利益を完全に知り尽くすことはできない。

孫子 (講談社学術文庫)



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いきなり、章が変わって長文になってきました。事例がいちいち古代の戦争を題材にしているのはご容赦ください。

孫子が想定する戦いは、遠く国外に軍を進めて、会戦で敵軍を破る、または敵の籠る城を攻め落とす、という形式を前提としているので、勝利にたどり着くまで、大軍の兵站(ロジスティクス)が万全であることを維持することの困難性と、それが大金を要し、国家財政を圧迫させる危機感を強く持っているのです。

よって、短期決戦で勝利を収めること、もっといえば戦わずして勝つ(おっと、このセリフは別の節で登場するのでした、、、)ことを最善としています。

これは現代ビジネスにおいて、

① 新規ビジネスへの先行投資は十分に回収できるかの事前検討の重要性
② いったん新ビジネスを始めた際に、兵站(へいたん)として、たとえば、
  ・ 営業や生産現場の人員の士気が十分に高いか(人事管理)
  ・ 新製品が新市場にまできちんと届く販売チャネルが整備されているか(SCM)
  ・ 増大する在庫投資や売掛金の分、膨らむ運転資金が確保されているか(資金管理)

といったことへの目配りがきちんとできている上で、新規事業を立ち上げようとしているか、を十分に検証することを勧めていると理解できます。

今一度、古代の戦争に例をとるならば、
① 戦争が総力戦・消耗戦である以上、一日長引けばその分国家財政に与えるインパクトをきちんと計算しておく
② 時間を度外視して、何事も完璧にしないと気が済まない、小心な完璧主義者は指揮者には向かない
③ 軍備の充実や戦闘での戦果(結果)にしか興味のない幼稚な指導者ばかりでは、国家財政が破たんしてしまう
        → 事業部の設備投資ばかり声高に主張して、借入金を増やして返済できない愚

ということになるでしょう。

歴史上の教訓例としては、長期化したベトナム戦争の影響で、増大する戦費負担でアメリカ合衆国の財政赤字とインフレが起こり、ドルと金の交換停止(1971年:いわゆるニクソンショック)から、米ドルの信認が揺らぎ、変動相場制に移行したことが思い起こされます。

「経済を知らぬ者は兵を語るべからず」

現代ビジネス風に言えば、「資金計画の裏付けのない事業計画は実行に値せず」
孫子の兵法(入門編)_第2章 作戦篇 5 兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)を睹(み)ざるなり


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サプライチェーン管理(1) - SCMと在庫は切っても切れない仲

■ 製造業だけの問題ではない「在庫」のお話し

経営管理(基礎編)
今回から、「サプライチェーン管理」のお話をします。本シリーズでは、経営管理の領域として、

① 事業ポートフォリオ
② エンジニアリングチェーン
③ サプライチェーン
④ 組織

の4つがあるとお話しました。

経営管理(基礎編)_経営管理対象

各論として、「前回」まで①の「事業ポートフォリオ」のお話をしましたが、次は②を飛ばして③の「サプライチェーン」になります。基本形としては、お客様にお届けする「製商品」の「在庫」の在り方でパターン化してお話します。

まずは「製造業」を例にした一般論で概要をご理解頂きたいと思います。すると、「コンテンツ産業」「流通業」「サービス業」に興味関心がある方は、「在庫」すべき顧客への提供価値を体現するものが、物理的な実態がなく、デジタルデータだったり、同時消費性の強いサービス行為そのものだったりするので、業界実態にそぐわないとお感じになられるかもしれません。

しかし、「お客様に必要な時に必要な価値を提供する」行動には、共通的な考え方が必ず存在します。本シリーズではその基本概念を説明します。業界ごとの各論は、別シリーズで取り上げる予定です。

さらに、②を後回しにした理由は、③で「在庫」の持ち方が理解できてこそ、②で「商品・サービス」のスペック情報の管理手法の秘訣が理解できる、と筆者が考えているからです。

それでは、以降の章にて、サプライチェーン管理の概要のお話から始めたいと思います。


■ 「SCM」って何の呪文?

「SCM」とは「Supply Chain Management(サプライチェーン管理)」のことで、製造業を前提した説明としては、「原料の手配からお客様の手元に製品が届くまでのプロセスの効率化と全体最適化をはかること」と一般的に言われます。

分かりやすく図解すると、次のようになります。

経営管理(基礎編)_SCMの目的と効果 

1.SCMの目的
慢性的物不足で、高度経済成長下の旺盛な需要があった、作れば売れる時代は終焉を迎えました。有効需要の減少により、生産能力の方が慢性的に顧客需要より大きい現在、「ムダなく、顧客ニーズに対応して、利益を上げながらモノを供給する」ことの重要性が高まっています。

※ 「モノ」とは、有形物のみを意味していません。ユーザ(顧客)は、レビット風に言うと、「4分の1インチの電動ドリルを100万個も欲しかったわけではない。100万個の4分の1インチの穴を開けたかっただけだ」 
電動ドリルを100万台売るのではなく、ユーザの自宅や工事現場に赴いて、ユーザの代わりに4分の1インチの穴を開けるDIY代行サービスを提供することでも顧客満足は満たされるわけです。

2.SCMの効果
① 顧客の視点
顧客からすれば、欲しい時に欲しいモノが手に入れば、顧客満足が得られます。この顧客満足を最大化すること、これが顧客視点からのSCMの効果です。

② 企業の視点
ここは、会計的に3つにブレイクダウンしました。
・販売機会を逃さない - 売上高の最大化(欠品を起こさない)
・コスト低減 - 廃棄されるムダな在庫を作らない、物流費を抑制する(カラのトラックを走らせない)、生産の平準化による単位あたり固定費を最小化する、ムダな倉庫を作らない(減価償却費・維持費の削減)
・資金滞留を最小化 - 在庫期間を最短化(原材料、仕掛品、製品すべて)

資金については、少々説明が必要なようです。顧客に製品をお届けするためには、まず原材料を仕入れ、製品化のために加工費を支出、そして製品在庫として倉庫に保管、ようやく売り上げた後、売掛金回収や手形が落ちるまで、材料費や加工費に対して支払った資金が回収できません。支出したお金がなかなか回収できないということは、別の用途でお金が必要になった際、その資金調達のために、銀行から借り入れを行い、またまた余計な支払利息が発生するかもしれません。ですので、企業が在庫を持っているのは、支払ったお金に利息も付けずに自社倉庫にしまっておくことと同義です。キャッシュフロー改善のためには在庫低減、在庫低減のためにはSCMの実践、という理屈なわけです。

③ サプライヤーの視点
サプライヤーも独立した企業なので、企業としてのSCMの効果に対する見方は、②企業の視点に含まれます。あえて、③を独立させたのは、本当にSCMの効果を最大限発揮させようとしたら、会社の壁をぶち壊して、原材料の調達から、エンドユーザの手元に配送するまで、関係する企業全体の問題としてひとつのSCMとして考える。そうすると、そのビジネスにかかわった企業全体が儲かりまっせ! ということを強調したいがためです。

関係企業の皆がWin-Winになるためには、お互いの情報を共有し、十分な準備時間を確保したうえで準備態勢を整えて、自社の番が来たら、最短の時間でかつ最小コストでサプライチェーン上の役目を果たす。そうなることが、SCMが一企業内で完結させず、企業間をつなぐチェーンとして機能する本来の意味となります。


■ 「在庫」が必要な時とはどんな時ですか?

前章であえて、小難しいSCMの定義を行いましたが、極言すると、SCMとは「在庫」を徹底的に無くすことです。本当は「ムダ」を無くす、と言いたいのですが、生産管理の分野では、「ムダ」にもいろいろ種類があるため、ここではその詳細をすべて解説するわけにはいかないので、簡単に「在庫」と言い換えています。

ということは、「在庫」が一切不要なビジネスモデルで商売をすれば、「ムダ」は最小限になる? 基本としてはその通りです。ではなぜ、現実には「在庫」が世の中に溢れかえっているでしょうか???

その理由は、「需要と供給のギャップを在庫で調整しているから」

需給ギャップにも、いろいろあります。ここはタイミング(時)だけ見てみましょう。
(SCMの目的チャートを確認してみてください。「時」「場所」「量」「モノ」「品質」とSCMが調整するべき要素は最低限で5つはあります)

「需要のリードタイム」と「供給のリードタイム」のギャップを埋めるのが「在庫」です。

経営管理(基礎編)_在庫が必要になる時とは 

サンドウィッチ:
あなたが、コンビニにサンドウィッチを買いに行ったとき、陳列棚にサンドイッチが無ければ欠品です。売り逃し、販売機会の喪失です。でも、コンビニチェーンは、あなたが、その時間にサンドイッチを買いに来ることが予想できません。そもそも何個、誰が買うのかわからない。でも一日3回の食事をとりそうな時間帯には、サンドイッチが大体何個ぐらい必要とされるのかある程度分かる。ならば、注文される前に見越しで作りだめしておいて、「在庫」として陳列棚に保管しておけばよろしい。あなたは、買いたいときに陳列棚に保管してあるサンドイッチを手に取るだけです。

「供給リードタイム > 需要リードタイム」 → 在庫が必要


クリスマスケーキ:

一方で、名前入りのクリスマスケーキの場合はどうでしょう? あなたは、かわいい子供のために、子供の名前が入ったアニメキャラで装飾されたクリスマスケーキを12月上旬に買いたくなったとして、早速コンビニに出かけて予約カードに必要事項を記入します。コンビニは、予約カードを受け取ってから、いそいそと小麦粉と生クリームを手配して、12月24日の受け渡し時間の17:00にあなたにお子さんのネーム入りのクリスマスケーキを手渡せばよいのです。あなたのお子さんの名前入りのクリスマスケーキを何個も作って陳列していても、よっぽど奇特な人以外、そんなケーキには目もくれないでしょうから、コンビニもそんなケーキを在庫しておく必然は無いのです。

「供給リードタイム < 需要リードタイム」 → 在庫が不要

今回は、「SCMと在庫は切っても切れない仲」の説明をしました。次回は、「在庫の持ち方によるビジネスモデルの分類」のお話をします。
経営管理(基礎編)_サプライチェーン管理(1)- SCMと在庫は切っても切れない仲




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三菱電、資本効率を事業ごとに管理 今期 資金投入にメリハリ

■ おまじないとして「ROE」に言及していますが、いったん無視で

経営管理会計トピック
三菱電機が、従来の「売上高営業利益率(ROS)」などで管理してきた事業部別の収益性を「三菱電機版ROIC」なるもので管理する! という新聞記事がありました。そして記事は次の一文で締められています。

「増配とあわせ新指標で資金を有効に活用し、継続的なROE改善を目指す。」

まあ、ROEうんぬんはある種の「おまじない」としていったん脇に置いておくとして、今回は、「三菱電機版ROIC」の計算式への理解を深めるとともに、三菱電機のねらいを、業績管理会計の格好のお手本として、ちと解説してみたいと思います。

2015/3/25|日本経済新聞|朝刊 三菱電、資本効率を事業ごとに管理 今期 資金投入にメリハリ

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「三菱電機は2015年3月期から、事業部門ごとに資本の効率性を管理する仕組みを導入する。各部門の事業活動に必要なお金を節約しつつ、効率的に稼ぐことを目標とする新指標を使う。今期は2000億円規模の戦略投資を検討するなど攻めの姿勢に転じている。資金の有効活用を促す新指標で投資にメリハリを付け、今期見通しで12%程度の自己資本利益率(ROE)引き上げを目指す。」


■ まず教科書的なROICとは

「ROIC:Return On Invested Capital(投下資本利益率)」の教科書的な計算式は、

= NOPAT ÷ 投下資本 × 100
= 営業利益 × (1 - 実効税率) ÷ (有利子負債 + 純資産) × 100

となります。

どんな事業や企業に投資するべきか、投資収益性から投資判断を必要とする人が使う指標です。

分子に支払利息の影響を受けない営業利益を使っていること、かつ税金を考慮していること、分母に有利子負債と純資産の合計額を使っていることから、

① キャッシュベースのリターンを想定している
② 資金調達構成の影響を受けない

投資収益性を測る指標となります。

経営者や、企業全体を投資対象と考える投資家(広く一般的に事業会社にお金を提供して、見返りとしてキャッシュを望んでいる人たち)は、「投下資本」をB/Sの右側(貸方)で考えます。

経営管理会計トピック_投資家から見た投下資本

一方で、ある一定の事業領域におけるビジネス責任のある立場にある人たち(一般的には事業部長とかカンパニー長など)は、どれだけの資産を動員して自分が責任を有するビジネスの投資収益性を高めるか、という視点から、「投下資本(この場合は投下資産と呼ぶべきですが)」をB/Sの左側(借方)で考えます。

経営管理会計トピック_経営者から見た投下資本

今回の、「三菱電機版ROIC」は、各事業部長に対して、自分の事業における投資収益性を管理させる意図から、B/Sの左側アプローチで「投下資本」を把握することを選択しています。


■ 次に三菱電機版「ROIC」の構造をひも解きます

では、計算式から。

三菱電機版ROIC = 営業利益 ÷ 投下資本 × 100
                 = 営業利益 ÷ (運転資本 + 固定資産) × 100

事業部長に管理させるので、いったん実効税率は忘れさせます。厳密にいうと、三菱電機は当然グローバル企業なので、各事業部が日本以外でも事業活動をしているため、税金とか、キャッシュベースの収益とか言い出すと、世界各国の税率と、その国・地域ごとの営業利益を個別に管理しなくてはいけなくなります。それは事業部長には荷が重いということです。

そして、投下資本は、調達側で考えるのではなく、事業部長の視点に立って、資産として事業にどれだけ使用するか、運用側で考えさせることになっています。

では、図解したものを下記にお示しします。

経営管理会計トピック_三菱電機版ROIC

P/LとB/Sの世界だけで、事業部長に対して、投資収益性を管理させようとしています。まあ、極めて実務的で、成功確率はその方が高いと思われます。

事業部長が、自身の事業における投資収益性をコントロールする際にさわれるコントロールレバーは次の7つです。

P/Lからは、
① 売上高(↑)
② 売上原価(↓)
③ 販管費(↓)

B/Sからは、
④ 売上債権(↓)
⑤ 在庫(↓)
⑥ 買入債務(↑)
⑦ 固定資産(↓)

これが、従来の「売上高営業利益率(ROS)」だと、上記の①から③までが事業部長の責任範囲でした。これにB/Sからの④から⑦が加わったということになります。

責任と権利は「ウラハラ」の関係にあります。事業部長に「運転資本」の管理をさせるということは、お得意様からの売掛金の回収期間の短縮、サプライヤーへの買掛金の支払い期間の延期を、事業部長がコントロールできる、という前提が無いと、成立しません。

資金管理子会社が、CMS(Cash Management System)を運用していて、ネッティングとかプーリングとか、通貨(ドルとかユーロとか)ごとに集中管理していたり、汎用部材を「グローバル調達センター」が、集中購買管理していたりしていたら、その部署と事業部長の権限バランスをとるための制度設計が難しそうですね。


■ 最後に「ROIC」が改善すると「ROE」が上昇するの巻

別段、「風が吹けば桶屋が儲かる」ではありませんが、両者には、新聞記事から引用すると、次のような関係性がある、と一般的に考えられています。

1)監視強化
「新指標では事業に必要なお金をどう節約するかをより細かくチェックする。」

2)適切な資金配分
「ROICが改善している部門には優先的に資金を投入するなどメリハリを付け、投資を収益拡大に結びつけやすくする。」

1)は、可視化あるところに管理アリ、なので、ふーん、そういうものか、とまあ納得できます。でも2)は、より儲かっているところに資金を投下して、儲からないところからはお金を引き揚げる、と言っています。

うーーん? 2)はどうなんでしょう? そんな機械的な投資判断を三菱電機ほどのビックネームがするはずがありません。ある種のPPM理論(事業の目利き)をもってして、事業内容から資金配分を考えるはずです。

この辺のPPM理論については、次の投稿をご参考下さい。
⇒「事業ポートフォリオ管理(3) - ポートフォリオ組み換え方法

2)はともかく、1)の効果から、社内でムダなお金の使い方をしなくなります(本当かな?)。そうすると、余剰資金が生まれます。となれば、記事によると、

「だが自己資本比率は足元で46%と高く、好業績でも自己資本がさらに膨む恐れもあった。日本企業のお金の使い道に対する投資家の目が一段と厳しくなる中、増配とあわせ新指標で資金を有効に活用し、継続的なROE改善を目指す。」

はぁー、増配(社外流出)による純資産の圧縮 → ROEの分母が小さくなる → ROEが改善する。。。 またその論法ですか。(-_-)

ROE改善で締めてくれるのではなく、2)のより儲かっているビジネスの成長に集中的に資金投下して、分子を大きくして、企業の利益と資金(内部留保)を増やす。その余技として、ある一定幅の増配なら許容できないこともないこともないのですが。。。

好業績の結果、内部留保が厚くなり、自己資本比率が高くなって何が悪いんですか? 次のビジネスチャンスに回すお金が増えるじゃないですか。保有する現金等価物が増えれば、放っておいてもその分は資産価値面から株価は上がるじゃないですか。倒産リスクが低くなり、よりハイリスク・ハイリターンのビジネス(一部言い換えると、より長期的な取り組みを必要とするビジネス)にも取り組めるようになるじゃないですか!!!

キャッシュ(配当)を欲しがる株式の短期保有者は無視して、本質的な企業価値増進に向けた経営をしてほしいものです。

(決して、三菱電機はそうでないと言っているわけではないですよ。最近の「ROE」を信奉する一部の人に向けて言っているだけですよ!あくまで一般論です。)



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(一目均衡)自社株買いの功罪 編集委員 北沢千秋

■ ROEブームの渦中でも本質を分かっている記者はいらっしゃいます!!

経営管理会計トピック
「ROE」重視の風潮が2014年の株式市場を席巻しました。
それを後追いするように、このような新聞記事が出ていました。

2015/3/22|日本経済新聞|朝刊 (羅針盤)「ROE革命相場」始まる

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「企業の稼ぐ力の復活を柱とする政府の成長戦略をきっかけに、今回ようやく日本の経営者は自らROEに向き合い始めた。そうした変化を投資家も歓迎し株価が上がる。資本効率を高める動きがもっと広がれば、「ROE革命相場」は長続きするはずだ。」
(編集委員 三反園哲治)

論旨は、海外投資家を東京市場にもっと呼び込むために、東証上場企業の平均で8%台と低い(?)ROEを、米国企業並みに15%前後に引き上げれば、中長期マネーも惹きつけられる。1部上場の株主配分(配当や自社株買い)は15年3月期予想で、13兆4000億円と過去最高を更新し、なかでも自社株買いをすれば市場に流通する株式数を減らすことで、需給が改善し、株高にもつながる、とのことです。

記事を読んで正直ガッカリしました。ほとんどの株価は、足元の配当や自己株取得(その結果もたらされるROEの分母減らしによるROEの見かけ上の改善)で値付けられているのはなくて、将来キャッシュフローの現在価値で適正値が割り出されます。と筆者は信じているからです。

だからこそ、中長期の企業の事業計画や、R&D、コンペチタ-との財・サービス市場における競争状況から、将来の企業業績を予測することが大事で、それ以外の要因は短期的な価格変動(はっきり言って株価形成のノイズ!!!)にすぎません。それが、たとえ経営者による自社株買いの演出であっても。

同じ日刊紙でこういう記事も過去に掲載していますよね。
⇒「(スクランブル)高ROE株、買い疲れ 投資家は改善度に注目

ということで、署名記事をあからさまに批判したくなった2日後に、胸をすくような、これまた別の署名記事を同紙で目にしました。\(^^)/

2015/3/24|日本経済新聞|朝刊 (一目均衡)自社株買いの功罪


「『できれば自社株買いはやめてほしい……』。農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)の奥野一成・運用担当執行役員は複雑な表情だ。
 話題の主はファナック。株主還元と投資家向け広報に後ろ向きな企業の代名詞といわれてきた同社が、増配か自社株買いを検討すると伝えられ、市場はその「変節」を歓迎した。
 「日本のバークシャー・ハザウェイ」を目指して農林中央金庫からスピンオフしたNVICは、運用するファンドでファナック株を長期保有中。それでも株価急騰を喜べないのは、『株主が還元でお金を受け取るよりも、会社に預けていた方が高い利回りを得られる』と考えるからだ。」
(編集委員 北沢千秋)


■ 北沢氏のロジックを追っかけます!

北沢氏の論旨は次の通りです。

短期マネーは自社株買いをはやすが、長期投資家の目線は冷ややかである。なぜなら、自社株買いが本当に賢い選択かは、現在の株価水準との見合いだからである。企業が、貸借対照表(B/S)の借方(左側)にある現預金を使って、貸方(右側)の純資産を買い戻すのが自社株買い。「PBR」が1倍を下回っている株価水準の場合、企業が持っている現預金の再投資先として、自社株を選択するのは、経済合理的だからである。

ここでちょっと解説。

※ PBR: Price Book-value Ratio (株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株当たり純資産

筆者は、PBR = 時価総額 ÷ 純資産(B/S上の簿価) の計算式の方が好みですが。

この指標が、「1」を下回っているということは、純資産のB/S上の簿価が、株式市場で値段が付けられている時価(1株の値段が株価。純資産全体の評価額は時価総額となる)より大きい(高い)ということ。

「純資産の簿価 > 時価総額」 または 「1株当たり純資産 > 株価」 

という不等式が成立しているということ。

これって、相対的に割安の値段(株価)で、その会社の保有資産が買えるということを意味しています。ただし、企業継続(ゴーイングコンサーン)に疑義がある、つまり倒産のリスクがあったりすると、それが株価に織り込まれて「1」を割り込むことがありますが、それは、マスコミ報道や『有価証券報告書』などを注視していれば分かること。

それから、業種別・規模別にもPBRには一定のレンジがあるので、気になる方は東証の下記リンクからご自身で確認してみてください。

規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧 (←月別データ)
 (2015年2月は、原油安と低金利から、石油関連、銀行業などが「1」倍割れ)

簡単に言うと、投資家が10%のリターンを期待している時、100円で110円の価値のあるモノをいったん買って即時110円で転売すれば、10%のリターンが手元に残ります。つまり、株価:100円で、110円の価値がある会社の純資産が買うことがそれと同義なのです。

次は、視点を経営者に移します。経営者が、新規ビジネスへの投資の利回りが、5%と見込んでいて、同時に、自社株のPBRが「0.90909....」だったら? 余裕資金が手元にあって、新規ビジネスへの投資か、自社株買いかしか選択肢が無い場合、自社株買いをすれば、10%のリターンが見込めます。同時に、「ROE」も改善しますしね。

さらに、有利子負債の借入利息が、10%より低く3%だったら? 手元資金が無くても、3%でお金を借りて、自社株買いをすれば、その瞬間で7%のサヤをとることができます。
(実際には、タックスシールドが効くので、もっとサヤは大きくなりますけどね、、、)
こうして、純資産を有利子負債に置き換えるのは、「リキャップCB」といって、これも2014年に結構、流行りましたよね。

リキャップCBについては下記投稿をご参考に。
⇒「洋インキHDの今期ROE8%に改善 最高水準に迫る


■ じゃあ、「PBR」が1倍割れだったら、自社株買いは定石(鉄板)なの?

そうは問屋が卸しません。

足元の「PBR」が「0.90909....」なのと同時に、10%のリターンが見込める新規ビジネスへの投資案件が併存していたら??? 筆者なら、迷わず新規ビジネスへの投資案件を選択します。どっちも利益率は10%で同じですが。そして逆に、ROEは改善しませんが。

どうしてだと思います?

それは、新規ビジネスで10%のリターンを得た方が、企業が成長するからです。企業が成長し、利益率が同じなら、次のビジネスチャンスで投資に回せるお金、株主に配当として分配できるお金、そう、絶対額としての利益(資金、内部留保ともいえる)が増えるからです。

この辺の理屈は、北沢氏の記事にも同様の記述があります。

「NVICの奥野氏は「自社株買いや増配の要求は所詮、限られた利益のパイをどう切り分けるかの議論」と主張する。それよりも望むのはパイの拡大で、持続的にパイを大きくできる企業が投資対象だ。
 一例が、やはり長期保有する信越化学工業という。同社の金川千尋会長は「ROEを高めるために最も重要なのは利益の絶対額を増やすこと」が持論。ROEが高くても利益の額が小さければ、成長の原動力となる機動的な大型投資ができないからだ。」

真っ当な経営者ならば、新規ビジネスに投資して、企業を成長させて、分配可能利益と次のビジネスチャンスへ回す内部留保の拡大を貪欲に追求するものでしょう。そこで、「自社株買い」を選択しようものなら、自ら事業拡大のための力量は持ち合わせておりません、と、経営者失格との烙印を自身に押すことになるのです。

それにしても、新聞社というのは、さすが言論の自由を尊重する本家本元です。「ROE」や「自社株買い」に対して、異なる見解を持つ編集委員が、異なる論旨の記事を自由に書いていいことになっているのですね。いやあ、日本国憲法第21条は、その情報を受け取る側には、取捨選択の眼力を養うことを強制しているわけです。権利と義務はまさに裏腹の関係ですね。

まあ、編集委員の署名記事は、こうして批判にさらされて、自然淘汰の力が働いて、最良の署名記事だけが生き残る、、、舌先三寸だけで生活している、筆者のような経営コンサルタントも同じ宿命を背負っているわけで。。。厳しい世界です。お察しします。

だから、筆者も覚悟の上でネットに名前をさらしていますよ! ガチ勝負のつもりですが。。。誰ですか? 「蟷螂之斧」「夜郎自大」「井の中の蛙大海を知らず」と言っているのは?(^^;)


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(スクランブル)海外M&Aブームの罠 価格高騰、収益貢献には時間

■ 海外M&Aが現在ブームだそうです。みんなが買えば値段は上がるのが道理

経営管理会計トピック

足元の企業業績の回復基調から、海外M&Aが活発になっています。一方で買収価格が高騰してきており、きちっと予想リターンが見込めるか、「EBITDA」という財務指標を使って、最近の買収価格は「割高」ではないかとの分析記事がありました。

2015/3/21|日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)海外M&Aブームの罠 価格高騰、収益貢献には時間

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「20日の日経平均株価は約15年ぶりの高値水準を付け、2万円乗せが視野に入ってきた。自社株買いや増配が好感されているが、一方で市場が消化し切れていない材料もある。企業が成長戦略の切り札として打ち出す海外企業のM&A(合併・買収)だ。世界的な株高で買収価格が高騰し、投資額に見合う収益が見込めるか気迷いムードも漂う。」

(↓下図は、2015年3月21日 日本経済新聞(朝刊)記事に添付されていたものを再掲)

経営管理会計トピック_海外企業M&Aの増加_レコフ調べ 
みんなが買えば、需給バランスで値段は上がります。インフレ下では、名目金額も増えます。デフレ下では、モノに投資すると、お金の価値が減少していました。マクロ・ミクロ経済学の初歩の初歩的な現象に過ぎないのですが。。。


■ なぜ「EBITDA」で割高かどうかが分かるのか疑問です

新聞記事では、現在の海外M&Aの買収金額が割高に映っているそうで、少々長くなりますが、その根拠と、関係者の見解を記事の転載にてご紹介します。

「最近のM&Aになると「海外市場の競争の激しさを理解したうえで買収を決めたのか、確証が持てない」と歯切れが悪い。その不安の根っこには「M&Aに高いお金を払いすぎていないか」という思いがある。」

「M&A助言会社GCAサヴィアンが集計した興味深いデータがある。日本企業が海外企業の買収で投じた資金をEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)で割った倍率を見ると、買収対象が米国企業、欧州企業とも今年は平均で15倍を超えている。」

「一般に10倍未満が適正水準とされることが多い。GCAの名倉英雄氏は『買収価格が高くなっているのは事実だが、いい会社を買えばそれ以上の収益貢献が見込める」と語る。12年に米社を買収した当時は割高といわれながら、北米の空調需要の拡大の追い風を受けて高い成長を続けるダイキン工業が好例だという。』」

(↓下図は、2015年3月21日 日本経済新聞(朝刊)記事に添付されていたものを再掲)

経営管理会計トピック_海外企業M&Aの買収価額の変化_GCAサヴィアンまとめ

先に、筆者の見解から申し上げると、「このような買収金額をEBITDAと比較した際、絶対値としての計算結果からは何の示唆も得られない」というものです。だって、「ダイキンがグッドマン・グローバルを買収した価値は、買収した時点のEBITDAで測っても分からないと自らおっしゃっているでしょ!」


■ 「EBITDA」の生い立ちと使命は終わっていることについて

EBITDA(Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Amortization)の計算式を簡単なもの1パターンだけに絞ってまずご紹介します。

EBITDA = 税引前利益 + 支払利息 + 減価償却費 

そもそも、なぜこのような財務指標が使われ始めたかを説明します。2000年前後のITバブルだった時代、低金利政策を採っていた米国に世界中から資金が集まり、主に米国を拠点とするヘッジファンド(投資ファンド)や投資銀行が世界各国の企業の買収に乗り出そうとしました。

そのころ、IFRS(前身のIASですね)などはまだ認知されていなかった時代で、各国の様々な規制の上で公表された「財務諸表」をいちいち米国会計基準(SEC基準)に修正して、比較していては膨大な労力を必要とし、機動的な(手抜きの)デユーデリの実施が困難になりつつあることに、関係者たちが気付きました。

そこで、世界各国の特殊事情、「金利水準」、「法人税率」、「耐用年数と採用可能な減価償却方法(それも複数ある)」の違いのすべてを一切捨象した「収益性指標」が無いものか、考えました。そして思いついたのです。そんな違いが起こる要因は最初からなかったことにすることに。

こうして生まれた「EBITDA」は、一番「営業キャッシュフロー」に近い利益概念として、ファイナンス分野の専門家も、「DCF法」に代えて企業価値分析を簡易に実施する際のツールとして使い始めました。

「EV / EBITDA 倍率」といって、企業買収資金総額が被買収企業の擬似的な年間営業CFの何年分に相当するか、で買収金額が割高か、割安かを判断するようになったのです。

ちなみに、EV(Enterprise Value):企業価値 = 時価総額 + 有利子負債 - 現預金

これって、設備投資の意思決定指標である手垢のついた「投資回収期間」と同じ発想のものです。そして、現在では、お金の「時間的価値」を考慮していない判断基準ということで、プロの間では見向きもされていない指標なのです。

「タックス・インバージョン」と「OECDの課税ルール強化・共通化」の動き、資金調達市場のグローバル化、IFRS導入による減価償却方法の収斂、等、もはや公表財務諸表でも少なくとも、グローバル企業については十分比較考量できる時代になりました。さらに、「キャッシュフロー計算書」の見方も当時に比べてずいぶん一般的になってきました。

早く、「EBITDA」さんには、財務分析の世界から引退して頂きたいですね。


■ ダメ押しで「EBITDA」のどこがおかしいのか?

「EBITDA」の一番の売りは、本業から生み出される「営業CF」に一番近い概念というものです。ですから、「キャッシュフロー計算書」から「営業CF」を拾って来れば、「EBITDA」はもはや不要です。

「営業CF」は、「EBITDA」が相手をしている「P/L」の世界だけでなく、「運転資金回転率」も考慮したものです。つまり、「棚卸資産」「売上債権」「買入債務」といった「B/S」の住人たちの増減も加味されます。まさか、企業買収を試みて財務分析しているプロの方々は、運転資金と営業CFの関係を知らないわけはないですよね。

もうひとつ、罪なところは、「EBITDA」が偏屈な会計基準の影響を受けない実質的な企業業績(収益性)を示す指標である、と誤解されて紹介されている点です。

法人税も払っていない、多額の有形無形固定資産(時にはのれん)の取得額も考慮されていない、利息も払っていない、そんな「収益性指標」は、何がどれだけ儲かっていると説明できるものなのでしょうか。

この点については、既に米国では「死亡宣告」が出ており、ワールドコムの不正経理事件を受けて、「レギュレーションG」(SEC:2003年)で、会計基準に準拠した利益指標を合わせて表示するように義務付けられています。

つまり、「EBITDA」だけ単独でのさばらせないよ、ということです。翻って日本の関係者の意識と、「EBITDA」の文字が躍る財務分析レポートや投資指南レポートの数々。。。

最後に、「EBITDA」という指標の使い方なのですが、これはあくまで単年度ベースの極めていびつなCF指標。それを分母にして、トレンドグラフ(上掲の折れ線グラフ)にて買収金額との比率を並べても、「ぬえ」のような正体不明の「EBITDA」なる基準値からなる分母が動くので、複数年の比較にはなりません。これは、グラフを使用した分析手法が間違っています。

まあ、投資アドバイザリー企業にもいろいろ事情はあるようですから、揚げ足取りはこの辺で。

ご参考まで、昨年の投稿記事を改めて紹介しておきます。

⇒「新規公開株の横顔 リクルートホールディングス メディア事業が収益源

このIR方針をどう解釈するか、後は読者の方々の賢明なご判断にお任せします。



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脚本家・加藤 陽一 2015年3月22日 クリエイター体験講座 AnimeJapan 2015

■ シナリオを描く前にコンセプトを共有する

コンテンツガイド

すでにカミングアウトしている通り、アニオタ親子なので、中学生の息子と東京ビックサイトで年一回催される「AnimeJapan 2015」に今年も行ってきました。

私は、アニメに接する際に3つの視点を持っています。

① 純粋にアニメ作品を鑑賞するのが好きなファンの視点
② クールジャパンの格好の商材としてどのように海外市場に拡販していくか、
   アニメ制作工程の「カイゼン」はどうしたら推進できるか、と経営コンサルの視点
③ クライアントに喜ばれる成果物をどのように作成できるか(パワポ資料やITシステム、経営管理制度など)、クリエイターの視点

今回は、③の視点から、ビジネスパーソンにも役立つと思われるワークショップ参加(見学)の体験をお伝えします。

放送作家から転じて脚本家になられた加藤陽一さんのシナリオ作成術・心構えをお聞きしてきました。

まず、加藤さんのご紹介から。読者の方々にお子さんがいらっしゃったら、「妖怪ウォッチ」「アイカツ!」「宇宙兄弟」のどれか知っている? と聞いてみてください。すべて、加藤さんのシナリオによる作品です。幼稚園生から高校生、女子か男子、どこかのセグメントにこの3作品のいずれかがミートするはずです。

加藤さんいわく、シナリオを描く際の秘訣は次の3つ。

① コンセプト中心主義
台詞回しのテクニックとか、キャラ立てなどは二の次。どういうコンセプトの作品にしたいか、それを監督、プロデューサー、演出家などの関係者と徹底的に議論・共有することに努めます。

② すべてのコンセプトは一つの作品には入らない
前向きになれる、親子愛を描く、悲しい、楽しい、人間ドラマ、ユーモア、怖い、友情、努力、、、
作品を作る際に、いろんなコンセプトが思いつきますが、決して全てを盛り込むことは事実上できない。何かを捨てなければならない。何を捨てるか、その判断基準が重要。

③ コミュニケーション重視
参加者からこういう質問がありました。
「シナリオ改稿を求められたとき、監督とプロデューサーから全く別々のことを言われたらどうしますか? 自分の持っている世界観・価値観をどこまで崩して妥協してシナリオを直しますか?」

いたって、ものづくり現場では当たり前になっている疑問だと思います。

この問いに対する加藤さんの回答は?

「監督とプロデューサーとで別々の指示が出ること自体がすでにおかしい。関係者全員で意思統一を図る会議体を運営しておけば、そこで多種多様な意見を収斂させることができる。」

「そもそも、二人から別々の指示がでてしまうということは、最初に固めたはずの『コンセプト』が弱かったということ。コンセプトをしっかり見つめ直し、必要があれば修正することで、全関係者の思いは共通解にもっていけるはず。」  

①も②もふくめて、この加藤さんの回答に、アニメの脚本(シナリオ)作成に限らず、広く一般的に「ものづくり」に携わっている人たちに対する強烈な教えは無いですか?

「妖怪ウォッチ」や「アイカツ!」は、おもちゃ会社(ホビー、トイズとか呼ばれている)のキャラクターグッズの拡販戦略にまで目配りしてシナリオが描かれます。そういう芸当ができるのも、最初にしっかりとした「コンセプト」を固め、関係者との意思疎通が阻害されないような「コミュニケーション」の場を設定しておく。

まず「商品コンセプト」

次に「現場のコミュニケーション」

だって世界に通用するジャパニメーション。それを作っている人達は、その世界では一流ですよ。その分野の一流の人の意見を参考にしない手はありません。


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イベントサイトへのリンクはこちら

加藤陽一さんのWiki


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孫子 第1章 計篇 4 算(さん)多きは勝ち、算少なきは敗る

■ 冷静な思考が勝利を呼び込む

経営戦略(基礎編)
まだ、実際に戦争を開始する前に、第1節で説明した「5つの基本事項」に照らして自軍と敵軍の勝率を比較・計量し、それに基づいて作戦計画を立案・策定して勝敗をシミュレーションしても「勝利」の予想が出てくるのは、敵よりも「勝算」が多いからです。「勝算」が多い方が実戦でも勝利するのが当たり前なのです。

※ 5つの基本事項とは
① 道(ビジョンとミッションの共有)
② 天(マクロ経営環境)
③ 地(事業ドメイン)
④ 将(経営者・管理職のスキルと適性)
⑤ 法(指揮命令系統と業績評価体系)

孫子 (講談社学術文庫)



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孫子は、「勝負は時の運」「やってみなければ勝敗は分からない」という姿勢を厳しく非難しています。第1節で「兵は国の大事なり」と言っていますよね。多大な経費と労力を費やす戦争(現代のビジネスでは新事業の開始などが相当)は、一か八かでやるものではなく、「勝算」が立って初めて始めるもの。

伸るか反るかの大博打で経営してはいけない、という戒めです。

ただし、これを現代のビジネスに当てはめる際には現代のビジネス環境をよく考えなければいけません。シリコンバレー風に「多産多死」を許容する投資環境がある場合、ケインズが言うところの「アニマルスピリッツ」や、サントリー創業者の鳥井信治郎氏が残した名言である「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」という起業家精神の尊重などなど。。。

チャレンジ精神がイノベーションを生み、イノベーションが新しい顧客と市場を創造し、新しい顧客と市場が企業に利益をもたらす。これも真理です。

しかし、冒険を試みるにも、元手が必要。その手当てがつく範囲でなら、なんでもやんちゃなことができるものです。もしかすると成功するかも!?、と思わせる「事業計画書」が無いと、シリコンバレーでもエンジェル投資家が付かないし。このしっかりとした「事業計画書」を描き切る、というのが孫子の言う「算多きは勝つ」ということなのでしょう。

経営の基本は、「大事な従業員を路頭に迷わせない」「倒産・リストラは最大限回避する」という所だと思うわけです。シリコンバレー風は、雇用の流動性も高いので、そこはその地域(クラスター)全体が雇用のセーフティ・ネットになっているのだと考えておいた方が無難でしょう。

やってみて、ダメなら即時撤退する。その時に従業員の生活は最低限守る。この撤退戦も含めた算段も孫子が言う「勝算」に入るのだと思います。
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 4 算(さん)多きは勝ち、算少なきは敗る  
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小林友昭

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