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(ビジネスTODAY)究極エコカー この指止まれ トヨタが燃料電池車の特許公開、市場創出へ陣営づくり

■ 新市場の創造 - つぎは「燃料電池車」

経営管理会計トピック
「前回」は、「トヨタ その先へ(3)幻の提携」というお題で、トヨタの「部品共通化によるコストダウン」「オープンアーキテクチャーによる市場創造」について、筆者の気づきを説明させていただきました。今回は引き続き、「オープンアーキテクチャーによる市場創造」として、「燃料電池車」に関するお話です。

2015/1/7|日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)究極エコカー この指止まれ トヨタが燃料電池車の特許公開、市場創出へ陣営づくり


(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます


「トヨタ自動車がエコカーの開発で新たな戦略に打って出る。「究極のエコカー」と位置づける燃料電池車で、保有する全ての特許を無償で公開する。ライバルに参入を呼びかけるほか、IT(情報技術)や電機、素材などで新たなパートナーを開拓する。半世紀近くかけて日本で普及させたハイブリッド車(HV)での囲い込み戦略を転換。早期普及を重要視し、要となるインフラ整備の原動力とする。」


■ トヨタの立ち位置の確認

以下は、新聞記事のサマリになります。

トヨタは、現在のエコカー市場の看板である「HV車」市場で、世界シェア約6割を占め、圧倒的に強い立場にあります。その要因は、他社に先駆けて1968年にHV車の開発に着手し、97年に乗用車で世界初のHV車「プリウス」を販売。ホンダなどライバルはトヨタの特許に抵触しない技術を模索するのに開発が後手後手にまわり、トヨタの独走を許しました。

しかし、この圧倒的な強みが、逆に弱みになり、HV車は日本以外の市場ではほとんど普及しておらず、米調査会社IHSオートモーティブによると2014年の世界の自動車生産は約8700万台で、HV比率は2%にとどまっています。

そこで、次世代のエコカー市場として、水素と酸素の融合による発電する「燃料電池車」に狙いを定め、

世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」(米ラスベガス)開幕に先立つ記者会見にて、他の自動車大手がIT連動の「スマートカー(賢い車)」技術を公開する中で、トヨタはあえて燃料電池車を出展。審査中を含めて関連特許約5680件を無償で公開すると表明しました。

「プリウス」でのHV車の開発力は断トツで、駆動システムをガソリンと電気で円滑に切り替えるといったコア技術を特許で守り、他社を寄せ付けない強さでリードしてきましたが、燃料電池車は、従来のガソリンスタンドをそのまま使えないため、代わりに水素ステーションを設置しないと、燃料電池車も普及しないと考え、全特許のうち、水素ステーション関連の約70件については、無期限での無償公開としました。


■ オープンアーキテクチャー戦略のおさらい

「オープンアーキテクチャー戦略」とは、「基本設計・仕様」を広く公開することで、他の開発者による互換性を持った互換機器や周辺機器の開発や販売を容易にして、市場でその規格を普及させる事を目的としたものです。

独自仕様によるユーザーの囲い込みとは反対の方法であり、他社の互換製品によって自社のシェアや利益を落とすリスクがあるものの、そのアーキテクチャが成功してデファクトスタンダードとなれば市場の仕様策定上のリーダーとみなされ、自社を含めた関連製品の拡大が期待できます。

その昔、IBMが「PC/AT互換機」の内部仕様を公開したところ、CompaqやDellをはじめ、数多くのメーカーがパソコン市場に参入し、市場は急拡大、OSではマイクロソフト、CPUではインテルが業界標準の座を射止めました。

水素ステーションはインフラ整備の問題なので、いちメーカーだけではエコシステムを構築できないとトヨタが判断し、他業種の参加者を募るに至ったということと理解しております。

現在、燃料電池車の技術提携のグループは、

① トヨタ・BMW陣営
② ホンダ・GM陣営
③ 日産・ダイムラー・フォード陣営

に分かれているため、今回のトヨタのオープン戦略がこの3陣営の勢力図をどのように変えるかが注目です。

(日本の古いことわざでいうなら、「損して得取れ」でしょうか)


■ オープンアーキテクチャー戦略の要諦

この戦略は、デファクトスタンダートをどうやって獲得するか、が成功の秘訣になります。IBMはパソコン市場でそこを見誤りました。自社が研究開発した技術規格を業界標準規格(優位規格)にするための、「知恵」が重要になります。

自動走行システムではグーグルとの提携はせず、水素電池車では広く外に協力者を求める。この使い分け、トヨタには必ず深慮遠謀があるものと信じておきます。

トヨタにとっては、身近な例として、電気自動車(EV)用急速充電器の規格である、日本自動車メーカーや電力会社が推進する「CHAdeMO(チャデモ)」と米独の自動車メーカー8社が推進する「Combined Charging System(コンボ)」の争いが参考になると思います。

2012年10月、SAE International(米国自動車技術会)が、急速充電器としてコンボを正式に採用し、一方で、チャデモ陣営も海外での採用を広げるために、チャデモの規格文書をJISの標準仕様書(TS)として公表したり、第三者認証機関が規格認証できるような制度作りに着手したりしています。


■ 規格争いの本当の勝者と敗者

その昔、ビデオテープレコーダー規格の争いでは、
VHS(松下電器(当時)・日本ビクター(当時)) 対 ベータマックス(ソニー・東芝)、

DVD の後継規格の争いでは、
Blu-ray(ソニー・パイオニア・シャープ) 対 HD DVD(松下電器(当時)・日立・東芝・日本ビクター(当時))

の規格争いが世間の耳目を集めました。

規格争いは、消費者にとって、

① 趨勢が決まるまで買い控えが発生し、欲しいけど買えない(二重支出の回避のため)
② 負けた規格のサービスの乗り換えができない(例:企業のアフターサービスが終了する、記録媒体のケースでは、保存済み情報の移行ができない)
③ 両者の変換器の追加購入や、双方の規格に対応した割高の製品の購入が不可避になる
④ 企業側の投資が控えられることにより、技術革新が鈍る、低価格化されにくい、品質不良による不具合の発生確率が高くなる

というデメリットが発生します。

企業の勝ち負けの前に、消費者が損をすることだけは避けて頂きたいと思います。

(かくいう筆者も、幼きとき、親にねだったビデオレコーダーがベータで、規格の違いを知らずにいそいそとレンタルビデオショップに出かけていったところ、VHSテープが棚に並んでいて、絶句してしまった経験があります)

HV車の後継エコカーが、EV車になるのか、FVC車になるのか、それとも両者が市場を住み分けて併存するのか、これからの市場と技術の動向から目が離せません。

(急速充電器と水素ステーション、インフラ整備の視点からは、二重投資になるのだろうなと感じています。)

(実は、住宅へのエネルギー供給は、車へのエネルギー供給と同じにすると、投資効率が良いのではと技術の門外漢ながら考えているのですが。。。とすればパナホームやトヨタホームがそこで登場?)




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