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会計の歴史

■ 『会計』の語源


会計(基礎編)
「会計(かいけい)」とは、そのまま素直に読んでいただくと、漢字で表記されていますので、中国から輸入された言葉ということが分かります。漢字はいわゆる「表意文字」ですので、それぞれの文字そのものに意味があります。「会」とは、「増える」の意で、「計」とは「正しく言う」の意味だそうです。このウンチクは、会計を学んで十数年経った後に知った時にはかなり衝撃を受けました。なぜかというと、あまりにもこの語源が的を射ていたからです。

つまり、「会計」とは、「利益(りえき)や儲(もう)けと呼ばれるお金が増えたことを、しかるべき人に正しく伝える」ことだからです。正しくお金が増えたことを誰かに報告するためには、正しく増えた金額を記録しておかなければなりません。その記録された資料のことを「帳簿(ちょうぼ)」と現代では一般的に呼び習わしていますが、西洋式の帳簿の記録方法が明治時代に輸入される前の江戸時代は、その記録を「帳合(ちょうあい)」と呼んでいました。私達は学生時代、授業に出席して先生が話したり黒板に書かれた文字をノートに書き込んでいたりしたと思いますが、そのことを少々古い言い方ではありますが、「帳面(ちょうめん)をとる」と言っていました(こう書くと私の年がばれてしまいますね)。この「帳面」こそ「帳簿」そのものなのです。
 
皆さんも、銀行に預金をお持ちだと思います。銀行に預けたお金(元手)に利息(儲け)分だけ増えていることを「預金通帳」に記載されている文字と数字で確認されているはずです。この場合、皆さんから貴重なお金を預かった銀行が預金者に利息が増えた分を正確に報告するために「預金通帳」に記録して皆さんに提示(報告)しているのです。そうです。この「お金を出した」代わりに「儲けた分の報告を受ける」という預金者と銀行のコミュニケーションが「会計」という漢字の意味そのものなのです。

会計の歴史は、言い換えれば、「どういう理屈で儲かったお金を計算するか、そしてどんな手段で大事な人に報告するか」の技法の歴史と言えます。当然その時々で「大事な人」の定義や同時に複数種類の大事な人がいるとその大事さの順序が変わったりしますが。だって皆さんも幼い時にイタズラがばれたら、お父さんとお母さんのどっちに先に謝ったらいいか迷われたご経験があるでしょう(笑)。


■ 一回こっきりの『儲け』


大航海時代 
コロンブスの艦隊(梶田達二さん画)saltyfriendstsushin.seesaa.net/article/113693342.html

「会計」の漢字は中国の歴史書(正史:せいし)に最初に登場する言葉です。正史とは国家の歴史書なので、一般民衆が時の皇帝に納める税金(当時は物納するケースもありましたが)がいくらで国庫に備蓄している金銀財宝がどれだけ増えたかを報告する様(さま)を表現していていることになります。

洋の東西を問わず、「権力者=お金持ち=事業資金の出し手=会計報告を受ける人」という構図は同様だったようです。欧州で会計技法が最初に大幅に発達したのは、大航海時代(15世紀~17世紀)です。冒険者たちが航海に先だって王様に航海資金をたとえば1000万円出してもらい、無事新大陸から帰港した際に、持ち帰った財宝を売りさばいたお金(1億円)から水夫へのお礼(500万円)やら船主に船賃(4500万円)やらを払った後の儲け(5000万円)を報告していました。この時の王様へ儲けを報告する計算方法は、王様の立場にたって見ると次の通りです。

航海が終わった際に王様の手元に残ったお金(6000万円)- 航海が始まる前に王様が投資したお金(1000万円)= 王様の儲け(5000万円)

こうしてその場限りの山分け方式で「儲け」を計算する方式が発達しました。


■ 「継続企業」の登場


次に欧米で会計が大幅に進化したのは、産業革命(18世紀半ば)の時代です。一回こっきりの航海で一旦ご破算にしていくら儲かったかを計算できなくなってしまいました。なにせ、産業資本家たちが、元手を出して設立した紡績会社や鉄道会社は、倒産や廃業しない限りずっと営業を続けていきますから。

元手を出していた資本家(株主や銀行)は、出資したお金の見返りとしての配当金や貸付利息を、会社を一旦清算せずに営業を続けたまま、太陽暦で1年という儲けを計算する期間を人工的に設定(これを決算(けっさん)という)して回収することにしました。その1年の間に会社から出ていったお金と入ってきたお金の差額から儲けを計算し、来年も会社が経営を続けることができる程度にはお金を会社に残すようにしました。

この時、資本家へ儲けを報告する計算方法は、1年間に顧客から受け取った代金が合計で1億円、その代金を得るために働いてくれた従業員に支払った給料(500万円)と工場や機械設備の1年分のレンタル料(4500万円)が必要とすると、次の通りです。

1年間に会社に入ってきたお金(1億円)-1年間に会社から出ていったお金(5000万円)= 1年間の儲け(5000万円)

さらに、

1年間の儲け(5000万円)- 来年の営業のために会社の手元に残しておくべきお金(2000万円)= 資本家が受け取れる儲け(3000万円)

こうして、経営者がどれだけ上手に1年間に儲けたかと、資本家が1年間我慢して回収を待ち続けた儲けが分離していくことになりました。


■ 会社自体が売買されることが日常になった現代


最近は、法律の整備や技術革新のスピードアップ、市場がグローバルになったことから、会社そのもの売買、すなわちM&Aが盛んになってきています。そうなると、資本家たちは、その瞬間瞬間で自分たちの会社がいくらの価値があるか、買いたい会社の本当の企業価値(リーズナブルな買値)がいくらなのかに興味が移ってきています。

そこで、資本家たちは、1年ごとの決算でいくら儲かったかの報告では満足せず、3か月ごとの報告を経営者に求めるようになりました。しかも、3か月ごとに、その瞬間風速で自分たちの会社がいくらで売れるか、会社そのものの売値(企業価値)の報告を求めるようになります。

「必要は発明の母」「貧すれば鈍する」それとも「窮鼠猫を噛む」でしょうか?頭の良い人が、産業革命時代からの1年間の儲けの計算方式に加えて、将来の会社の儲かり具合を予想して今年の営業活動の儲けと合計することで、現時点の会社の価値を計算する方法を思いつきました。

現在、会社が保有している在庫が将来売れ残りとなり損失となること、ある工場で生産している製品が将来売れなくなるので、工場へ設備投資として投下した資金は回収できなくなること、デリバティブと呼ばれている金融商品が将来値崩れして損がでることなどがわかっている分を今年の儲けから差し引くことにしました。逆に、将来儲けになることがわかっているものもあるかもしれません。そういう儲けは今年の儲けに足すことにします。ただし、会計報告は固め(保守的という)にした方が関係者は安心するので、将来の儲けを加えることに対しては、将来の損失を差し引くことより会計ルールとしてハードルを上げています。

したがって、最新の儲けの計算方法は、

1年間に会社に入ってきたお金 - 1年間に会社から出ていったお金 = 1年間の儲け

さらに、

1年間の儲け - 将来発生が予想される損失 = 企業価値を測定するために使う今年の儲け

最後に、

昨年末の企業価値 + 企業価値を測定するために使う今年の儲け = 今年の企業価値

を計算することになります。


これで司馬遷が残した史記から現代までの約2100年にわたる会計の歴史を一気呵成に説明したことになります。

会計の語源
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