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成長性分析(4) 前年成長率と指数分析の深堀り

■ 参考事例から読者の誘導法を学ぶ

管理会計(基礎編)
前回」は、各種トレンド分析、特にグラフでの表現方法とその読み取り方を説明しました。復習として適切な事例が新聞記事として掲載されたので、ご紹介します。

2015/3/14|日本経済新聞|朝刊 パソコン世界出荷台数、今年は4.9%減

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「【シリコンバレー=小川義也】米調査会社IDCは12日、2015年のパソコン(PC)の世界出荷台数が14年比で4.9%減少するとの予想を発表した。従来は3.3%の減少を見込んでいたが、新興国を中心に需要が落ち込むと判断した。」

この記事に掲載されていたグラフを下記に転載します。
(出典:日本経済新聞(朝刊)2015年3月14日「パソコンの世界出荷台数と前年比減少率」)

日本経済新聞(朝刊)2015年3月14日 掲載 パソコン世界出荷台数、今年は4.9%減

コメント1:
「実数」を表す棒グラフと、「変化率」を表す折れ線グラフの同時表記は、MS-Excelでも複合グラフとして作成するのが容易な一般的なトレンド分析の形式になります。

コメント2:
棒グラフ用の縦軸が、前回、注意したように、「絶対額」で「差数」を表現しようとして横軸との交点が実質的な意味で「0」となっていません。したがって、読者へ減少額の変化をより大きく見せようとするイメージを植え付けやすくなっています。

コメント3:
折れ線グラフが、パソコンの前年増減率ではなく、「減少率」と表現されているため、記事内容に合わせて、パソコンの世界出荷台数が減少していることをイメージづけようとしています。しかし、前年対比率としては、傾向として減少率が小さくなっていることは注意しておく必要があります。

→パソコン出荷台数が毎年減っているのは事実で、嘘はついていませんが、その印象の付け方に記者の作為を感じざるを得ません。後は、読者の方々の思いに託します。


■ 前年増減率(成長率)のさらなる分析は貢献度で

読者の皆さんは、よくある経済統計の「前年成長率(増減率)」を題材にしたトレンドグラフで、下記のようなGDP成長率のグラフを目にしたことはないでしょうか?

(出典:内閣府「実質GDP成長率とその寄与度」)

内閣府 実質GDP成長率(2006年第1四半期~2013年第1四半期)

前年増減率(成長率)において、GDPの場合は、主に、
① 消費
② 設備投資
③ 官公需
④ 輸出-輸入
で、その増減の原因を合わせて記述しています。

企業会計における財務分析にもこの手法を取り入れることができます。

下表は、GDP成長率分析にならったトヨタ自動車のFY12→FY13の当期純利益の増減率(成長率)の貢献度分析表になります。

財務分析(入門編)_トヨタ当期純利益成長率貢献度分析

計算方法を順に追っていきます。
① 当年実数 - 前年実数 = 前年差異 を求めます。
② 前年差異 ÷ 前年実数 × 100 = 成長率 を求めます。
③ 前年の要素別実数 ÷ 前年の当期純利益 × 100 = 前期構成比 を求めます。
④ 成長率 × 前期構成比 = 寄与度 が求まります。

トヨタ自動車は、FY12からFY13にかけて、純利益が83.8%伸びましたが、この成長に一番貢献したのが売上総利益(粗利)の135.4%。販管費:▲45.8%、法人税:▲19.9%を上回る利益創出を、P/Lのトップラインで稼ぎ出しました。

利益成長率への貢献度分析の場合は、利益へはそもそもマイナス効果となる費用項目は、実数上からマイナス値として扱ってください。ここを間違えると、正負の符号が入り乱れて正しく貢献度を表示できません。ご注意ください。


■ 指数の成長性の詳細分析はファンチャートで

前章と同様に、指数法でも、要因分析が可能です。複数の勘定科目の指数成長を並べるだけです。論より証拠で、まずトヨタ自動車から見ていきましょう。

ベースとなるトレンド表は次の通り。

財務分析(入門編)_トヨタ自動車_トレンド表

ここから、ファンチャートの元となる数表を作成。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート_数表

そして、ファンチャートを作成。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート1

固定費(固定資産)が多い企業の場合、利益の上下変動の方がB/Sなどの項目より激しくなるため、全項目を並べると、このように分布にばらつきがあります。このばらつき自体が貴重な情報になります。固定費比率が高い企業は、レバレッジが効いて、利益変動が大きくなりますし、資本集積の相対的に小さい企業は、CFも合わせて大きく動きます。トヨタは世界に冠たる大企業なので、「利益 > CF > 資産等 > 従業員数」という関係になります。

そこで、より変動幅の大きな項目を順番に外してばらつきを均していきます。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート2

最終形が下図になります。

財務分析(入門編)_トヨタ_ファンチャート3

トヨタは、財務的ファイナンスの無理もしない、大幅なリストラで固定費(人件費など)の削減をしない、売上高総資産回転率も安定、という優良企業の成長過程の典型的な事例を示してくれています。売上高、総資産、純資産がほぼ同じ動きで、従業員数が一番安定している(微増)という成長戦略の理想形のまんまです。

では、日産自動車を次に見ていきましょう。

トレンド表とファンチャートの元になる数表は次の通り。

財務分析(入門編)_日産自動車_トレンド表 
財務分析(入門編)_日産_ファンチャート_数表

同じように、ファンチャートを描いてみます。

財務分析(入門編)_日産_ファンチャート1

リーマンショックの直後、利益は大幅に成長しましたが、その後、成長が高止まりしています。さらに、FCFが減少傾向にあります。これは、営業CFがFY09の5~6割に減少したにも関わらず、積極的な設備投資の結果、投資CFが2倍以上に膨らんだことによります。では、利益とCFを除いた他の項目の推移はどうなっているでしょうか?

財務分析(入門編)_日産_ファンチャート2

まず、資産項目より、売上高の成長が低くなっています。これは総資産回転率の悪化、つまり積極的な設備投資が、売上高成長につながっていないことを示しています。さらに、従業員数が減少(正社員数も純減)しているため、いわゆる人件費の圧縮が行われています。それでいて、純資産 > 総資産(積極的な設備投資でも) > 売上高 という大小関係にあります。

人件費を減らして、設備投資と株主向けに自己資本の充実に力を入れています。現時点(FY14決算がそろそろ分かってくる時期)で、日産の販売・生産力がトヨタに比較してどうなっているか? まあ、前年対比以上に、トレンドで見ていれば、真の実力値とこれまでの戦略の適否がより分かりやすくなるものと思います。
(ご存知の通り、筆者はあえて企業業績の採点自体はしないので、コメントもここで寸止め) 

今回は、前年成長率と指数分析の深堀りの仕方について説明しました。
もう飽きたかもしれませんが、まだまだ成長性分析は続けさせてください。
財務分析(入門編)_成長性分析(4)前年成長率と指数分析の深堀り


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