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事業部別業績管理 間接費の配賦

■ 「業績管理」にとって大事なこと

管理会計(基礎編)
前回」は、とあるコンサルティングファームを題材に、「事業部別業績管理」の最も基本的なポイントを説明しました。

少々おさらいしておきます。
  • 「業績管理」には「管理」する「ヒト」がいなければならない
  • 「業績管理」する「ヒト」は「評価者」に評価されることで、管理行動を動機付けられる
  • 「業績管理」する「ヒト」は「業績管理指標」をベースに意思決定する
そこで、前回のケースでは、管理担当者の行動を誘導する「業績管理指標」に少々厄介な点があり、評価者は、思いのままに管理担当者の行動を誘導できないことを説明しました。
  1. 業績管理指標の使い方として、「率」を選択すると、「量」の適切な評価ができなくなる
  2. 間接費がそのままになっているので、事業部の全社に対する利益貢献度が「率」でも「量」でも測定することができない
今回は、この「業績管理指標」の設定にある工夫を施すことで、厄介な点の解消に努力してみることにします。


■ 間接費の配賦(はいふ)と事業部の貢献度

前章で言及したとおり、経営管理本部に集計されている「(事業部から見た)間接費」が、事業部別の利益(利益①)計算の外にあるため、全社利益(利益②)を稼ぐのに、それぞれの事業部長がどれだけ貢献しているか、利益「額」、利益「率」いずれとしても、不明瞭になっています。

管理会計(基礎編)_事業部別業績管理_直接費と間接費   

そこで、なんらかの一定のルールで、この「間接費」を各事業部に結び付けていきます。この結び付けを会計の世界では「配賦(はいふ)」と一般に言うのですが、どの会社にいっても、この「配賦」のルール(配賦基準)をどうやって決めるか、大いに揉めるところです。なぜならば、そもそも各事業部に直接関連付けて把握できないコスト(間接費)を無理やり各事業部に配ってしまおうというのが「配賦」なので、正しく配賦しようとすること自体が土台無理なのです。

おそらく、一般的に「正しい」とされる「配賦基準」は存在しないのだと言えるでしょう。なぜなら、間接費の配賦を受ける事業部長からすれば、自部門の間接費の負担が軽くなる「配賦基準」が正しい(言い換えると、相応しい)と考えるでしょうし、一方で、他部門からすれば、相手の負担が軽減される「配賦基準」を選択すれば、自部門の間接費の負担額が増えるわけです。事業部間で、「配賦基準」を決定するという命題において、トレード・オフ(ゼロサムゲーム)が発生していることがほとんどで、こういう場合は、何が正しく唯一の解かを決めることは大変難しいものです。

まあ、皆が納得できる、ある程度妥当なものなら考えつくかもしれませんが。。。これも筆者が大好物な論点のひとつなのですが、この「配賦基準」の選択問題については、いったん脇に置いて、別の機会に説明します。

今回の事例では、「わかりやすさ」「(表面的な)公正さ」の2点から、「配賦基準」を「割り勘」ということにします。つまり、経営管理本部に集計された間接費:100を等分して、50ずつ製造業事業部と流通小売事業部に配賦することにします。

管理会計(基礎編)_事業部別業績管理 間接費配賦後の事業部別損益  
全社利益:70を生み出すのに、製造業事業部は事業部利益:70、流通小売事業部は事業部利益:0となり、全社利益の全額が製造事業部長の働きの結果というように読み取れます。
とすると、流通小売事業部長は、全社利益にこれっぽっちも貢献していないということになります。この見解も強引な気がしますが、果たしてこういう評価でよいのでしょうか?


■ 評価基準の繊細さと割り切った判断基準

それでは、全社利益を因数分解させて頂きます。

全社利益 = 製造業事業部利益 + 流通小売事業部利益
          = (製造業事業部直接利益 - 製造業事業部間接費)
                           +  (流通小売事業部直接利益 - 流通小売事業部間接費)
          = 製造業事業部直接利益 + 流通小売事業部直接利益 - 全社間接費

全社利益がプラスなるためには、2つの事業部の直接利益がプラスになるだけでは足りなくて、全社間接費(経営管理本部で発生した部門費用)を2つの事業部の直接利益の合計が上回っている必要があります。

全社間接費の発生総額を是とした場合、それぞれの事業部は、力を合わせて、その間接費の発生総額を上回る直接利益額を獲得する必要があります。つまり、全社間接費を上回る直接利益「額」を目標にした方が、それぞれの事業部長への評価が適切にできそうです。裏返して言うと、直接利益「額」を評価基準にした方が、経営者の持つ「全社利益額・率の予算達成」という目標に沿った行動を各事業部長にとってもらえそうです。

というのは、前回、製造業事業部は直接利益率が目標に達していないため、目標の利益率より悪い案件の受注を辞退することは是か非か、という問いかけをしていましたが、この問いかけに対するひとつの解が出たということです。

つまり、事業部直接利益が黒字である限り、事業部直接利益「率」が目標に達していない受注案件も獲得して、事業部直接利益「額」を少しでも増やすことで、経営管理本部に集計された間接費を上回る金額を増やすことができ、結果として全社利益を増やすことに貢献できる、と考えた方がよいということです。

直接利益「率」の順守をいいすぎると、かえって全社利益「額」が小さくなる恐れがあります。なんと繊細なつくりになっているのでしょう、評価基準というものは。

こうした全社利益など、全体目標の利益額の増加に貢献しているかどうかを見る利益指標のことを「貢献利益」と呼んだりします。この場合は、事業部直接利益のことをそう呼ぶことができそうです。そういう意味では、流通小売事業部も全社利益に対して、直接利益:50が、間接費を超える全社利益を上げることに貢献してくれている「貢献利益」となります。決して貢献度ゼロではありません。

前回と違って、今回は、逆に「製造業事業部」の方が頑張った、という結論になりました。


■ (まとめ)このケースでの適切な業績管理指標の設定

ひとまず、これまでの知識の中で一定レベルの正解と思しきものを示しておきます。
社長の立場からすれば、全社利益の目標達成が望ましい。そのために、各事業部長には、それぞれの事業部を率いて利益を稼いでほしい。その際に、事業部長に指示すると、思惑通りに事業部長が行動してくれる管理指標の示し方は、
  1. 全社目標利益「額」を設定する
  2. 経営管理本部の部門費(間接費)の発生「額」を設定する
  3. それぞれの事業部直接利益「額」を設定する
  4. それぞれの事業部利益「額」が稼げるだけの事業部売上「額」を設定する
  5. 最後の仕上げに、事業部利益「率」を確認して、目標設定全体に無理が無いか検証する
という感じになります。
(前もって、管理会計を勉強されている方は、固定費や変動費が登場していないことに違和感があったりするかもしれません。その話は別の機会にちゃんとやりますのでご安心を)

上記の、目標設定の手順や指標の選び方は、当然、各社が置かれた競争市場の状況や、各社の成長ステージや保有リソースによって味付けが変わります。そういう事例ベースの各論も別の機会に説明したいと思います。

いったん、「割り勘」で間接費の配賦をしてよろしい、という前提で話を進めてきました。次回は、「割り勘」で本当に配賦していいのか、という論点を扱いたいと思います。

ここまで、「事業部別業績管理 間接費の配賦」を説明しました。
管理会計(基礎編)_事業部別業績管理 間接費の配賦 


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